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シチリア美食の王国へ02庶民の軽食の王、パーネ・カ・メウサ「アンティカ・フォカッチェリア・サン・フランチェスコ」(パレルモ・無料配信)

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どんな国の料理にも、庶民の日常料理と贅をこらした高級料理がある。そのどちらにも支持者がいて、どっちがいいということはないのだが、私はどちらかというと庶民料理に惹かれるタイプだ。だからパレルモに来て、(他の街でもそうだけれど)まずは気楽な食堂へ直行する。往きの飛行機の中では「どこへ行こう」と思い悩む。ヴッチリアそばの「サンタンドレア」もいいけど、 もっと庶民の軽食屋「アンティカ・フォカッチェリア・サン・フランチェ スコ」もいい。それともちょっと足をのばして、ヴィッラ・イジェアそばの 「トンナーラ」か、などと考えているとあっという間に着いてしまう。

パレルモに着いてまず一番目に食べるのを屋台ものと決めた場合。パレルモ の屋台食にはパニーノかピッツァの変型か、はたまた焼き鳥のような羊の腸の串焼きなどがあるが、もっとも普通に食べるトラディショナルなのはパンを使ったスナック。なかでも脾臓の煮込みを挟むパニーノか、アンチョビなどをのせたふんわり柔らかなピッツァだ。屋台は市場や街角のあちこちにあるが、前 回ここにいたからといって今回もそこにいるとは必ずしも言えないのが屋台である。勢い込んではるばるやってきたのに肩透かし、という悲しい目に合わないためにも絶対確実、年中無休の店はおさえておきたい。それが「アンティ カ・フォカッチェリア・サン・フランチェスコ」。ヴッチリア市場近く、その名のとおりサン・フランチェスコ・ディ・アッシジ教会の真正面にある。ここは屋台ではなく、ちゃんとしたパラッツォの一階。色ガラスの嵌ったリバティ様式のインテリアで、店内には時間がとまったような濃密な空気が漂う。セルフサービス、食べたいものをカウンターで自己申告して、受け取ったら自分でテーブルまで運ぶ。会計もレジに出向いて払う。

脾臓のパニーノ、パーネ・コン・ミルツァ(パレルモ弁ではパーネ・カ・メウサの脾臓は大量に下茹でしたものを薄切りし、それを随時必要な分だけ店の中央にある鍋のなかでくつくつと温める。オーダーする時にはチーズ入りの 「マリタータ」か、チーズなしの「スキエッタ」の指定をする。マリタータにはリコッタとカチョカヴァッロの細切りが入り、スキエッタは塩のみふって、 好みでレモンを絞って食べる。どちらもまずはパンの中身を少しむしりとって (捨ててしまう)、脾臓をのせ、フライ返しでギュッと押さえて余分な汁気を絞りとってから、という手順をたどる。脂の味とレモンの酸味もしくはチーズ の酸味とまろやかさが合わさり、意外と脾臓のしつこさを感じさせない。もちろん味としては強烈な個性を放っているけれど、シンプルで素直。

パーネ・コン・ミルツァはできたて熱々が一番美味しいが、冷めてもまた違 った美味しさが楽しめるのがスフィンチョーネ。オリーブオイルと水をたっぷり使ったごくごく柔らかいパン生地の上に、アンチョビ、たまねぎと炒めたトマト、パン粉、すりおろしたチーズ、オレガノなどをのせ、オリーブオイルをかけて焼きあげた分厚くてふんわりしたピッツァだ。庶民の街角スナックだが、 家庭でもよくつくられるおやつで、その家その家独自のレシピがあるという。 「アンティカ・フォカッチェリア」では、一口サイズから、一食に充分なサイ ズ、大きく焼いて切り分けるものなどバリエーションがいろいろある。

●Sant’Andrea(サンタンドレア)
Piazza Sant’Andrea,4 Palermo
Tel091-334999
火曜、水曜日昼休み、7~8 月日曜月曜休み、1月冬期休業
予算目安:28 ユーロ ヴッチリア市場そば、サン・ドメニコ教会のふもと。パレルモの家庭料理を忠実に守りつつも、今の人の嗜好を無視しないぎりぎりの線まで“軽く”してい る。インドアよりも、季節がよければ小さな広場に設けられたテーブルへ。傾斜があるので皿も傾くが、洗濯物がはためく中でカポナータをつまむのもまた一興。

●La Tonnara(ラ・トンナーラ) Piazza Tonnara,18 Palermo Tel091-363055
水曜休み

予算目安:26 ユーロ パレルモから一番近いビーチ、モンデッロに向かう道には二つあって、最短コースの新道と五つ星クラシック・ホテル「ヴィッラ・イジェア」の前を通って海沿いに行く道がある。この店は海沿いの道のそのホテルからモンデッロに 向かってすぐにある。ぱっと見なんの変哲もない店だが、味はちょっとびっくりするくらい完成度が高い。けして気取った料理ではないが、カジキとトマトのパスタなど、後日無性に食べたくなるほどその印象は深く強い。

●Grand Hotel Villa Igea(グランド・ホテル・ヴィッラ・イジェア) Salita Belmonte, 43 Palermo
Tel091-6312111 Fax091-547654
www.thi.it villa-igea@thi.it
114室 S134ユーロ~、D181ユーロ~ もとは、マルサラ王と呼ばれるワイナリー「フローリオ」のかつての当主が 建てたヴィッラ。当時の流行だったリバティ様式の広間が有名だが、湾を眺め る庭園、重厚な雰囲気のバーなども捨てがたい。ロベルト・ベニーニのマフィア・コメディー「ジョニー・ステッキーニ」の撮影もここで行われた。

●Antica Focacceria San Francesco(アンティカ・フォカッチェリア・サ ン・フランチェスコ)
Via Paternostro,58 Palermo
Tel091-320264
無休(冬期休業あり)
パーネ・カ・メウ 2.30 ユーロ、ミニスフィンチョーネ1ユーロ、パネッレ

1.10 ユーロ。 数年前より経営が変わり、パーネ・コン・ミルツァやパネッレといったスナック以外に、パスタや、肉、魚料理のメニューが加わった。パーネ・コン・ミル ツァはそれ一つで充分ボリュームがあるが、その前にちょっとつまみたいという気分のときには、ひよこ豆をペーストにして揚げたパネッレ(これをパンに 挟んで食べるのもトラディショナルなスナック)、リゾットを丸めてパン粉をつけて揚げたアランチーノ、ポテトコロッケなどをつまむ。みんな揚げ物。アラブやギリシャといった地中海っぽさを感じる。

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About Manami Ikeda (325 Articles)
大学卒業後、出版社に就職。女性誌編集に携わった後、98年に渡伊。以来ずっとフィレンツェ在住。取材とあらばどこにでも行きますが、できれば食と職人仕事に絞りたいというのが本音。趣味は猫と工場見学。
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