Antiche Carampane@Venezia

1月に次ぐ再訪で、今やヴェネツィア最大の楽しみとなっている大人の珠玉の店。満員の夜、プロセッコを飲み終えてワインを注文したいのに誰も来てくれなかったところ、隣に座ったカリフォルニアの老夫婦がVie de Romansのシャルドネを一杯注いでくれた。きちんとしたみなりの食通、風。こうしたお気持ちは有り難くいただき、後に私が頼んだVenica&Venicaのソーヴィニヨン・ブランRonco delle Meleをお二人にご賞味いただく。

「イタリア・ワインは詳しくないんだけどシャルドネにしようかソービニヨン・ブランにしようか迷ってたところだったんです。どうもありがとう」との答え。一人旅の時こうしたやりとりは嬉しい。心に通じる道は胃を通る、というアフォリズムは常に正しい。

例によってズッキーニ、ナス、ニンジンのジュリエンヌのフリットをつまみつつ料理を待つ。前菜は「なまものミスト」今朝も市場で見たマグロの赤身、スズキ、ガンベロ、ガンベロ・ロッソ、スカンポ、ホタテのグリル、サーモン。これを唐辛子とレモンが効いたオイル、もしくはヨーグルトベースのギリシャ風ツァツィキで食べる。日本料理の刺身と違ってイタリア料理の前菜の生魚は素材の新鮮さを誇示する華やかな幕開けである。

ついでいつもの黒服マダムに薦められた初耳のヴェネツィア伝統パスタ「スパゲッティ・イン・カッサピーパ(だと思ったけど・・・)」。つまりカッセルオラ、キャセロール入りのパスタでカタツムリが入ったトマトソース。セコンドは今や季節も終わりかけ、店主のフランチェスコ曰く「多分最後の」ソフト・シェル・クラブ「モエーケ」のフリット。すでに昼間に立ち寄った時から1人分キープしておいてもらったので滑らかなポレンタとともに味わう。カニとしての旨味はエルバ島のマルゲリータやグランセオラのほうが上だけれど、はかなく切ない初夏の味。

メニューはいつも口述筆記、2回目にして同じ料理はひとつもなかった。今ヴェネツィアで行きたい店、を挙げるなら確実に3本指に入る。

MASA