Harry’s BAR@Venezia

●年ぶりのハリーズ・バー。店の入り口に飾られた「ハリーズバー物語」はかつて私がドットーレ・アリーゴにプレゼントしたもの、か?。例によってベッリーニ。作り手はマエストロ・クラウディオ。揚げたてのメンチ・コロッケをつまみに。そして2階にてランチだが私たちが一番客。

食卓を囲むのはA女史、ヴェネツィア在住のガラス作家T氏。再びベッリーニ飲みつつ前菜はカルパッチョ。今更説明するまでもないハリーズバーの王道中の王道。「子牛」というが肉質は桃色のVitelloiではなく紅いVitelloneでマヨネーズ・ベースのソースで彩られている。一緒に出てくるのはマーシュのサラダ。パンはトースト。これで45ユーロ。プリモはタリアテッレ・コン・スカンピ・アモリケーヌ。つまり海老の頭で出汁をとったアメリケーヌ・ソース。濃厚、豊満、70年代の味付けであまりに濃厚なので半分残す。ドルチェのタルト&ジェラートは軽快にして巧妙。ワインはカラフのハウス白を少々。食前酒、前菜、プリモ、ドルチェで3人で合計400ユーロ、つまり6万円、一人頭2万円。

安いか高いかはもちろん店の何を見て判断基準とするかによる。付加価値、歴史と記憶、訪問したという意義、単なる物見遊山。しかしワインをのぞいて2万円あればMoadonnina del PescatoreやLe Calandreなど才能あふれる料理人が数々のイタリアの美味なる食材を駆使した絢爛豪華なる最先端イタリア料理が楽しめる昨今、30年前の料理に200ユーロ払う男気ある豪傑は一体いかなる人物か?この日の昼食で私が口にした食材は以下の通り。牛肉、マーシュ、スカンピ、わずかなトマト、小麦粉、玉子。浪費はヴェネツィアのデカダンの真骨頂だがこの店はその極致か。MASA