Scoppio del Carro

本日4月12日はパスクア、つまり復活祭であります。キリストの復活を祝う教会の鐘の音は朝から街中に響き渡り、朝8時にはすでに恒例の山車の出発を待つ市民の行列が。朝9時、牛に引かれて善光寺参りならぬ、山車の出発。その聖なる行列がたどり着いたドゥオモ広場ではこの日のために大聖堂正面扉も、ミケランジェロが天国の門とよんだ洗礼堂正面扉も開け放たれ、大司教は数百人が見守る静寂の中で聖なるミサを厳かに執り行い、ズバンディエラトーレが振る旗は、大聖堂前を流れる風にたなびき、信者も異教徒も固唾をのんでその時を待つ。

すると、大聖堂からコロンバが水平発射され、山車に命中すると同時に仕掛け花火が一斉に火を噴く。ずどどどど、ばりばりばりばり、がががががが、ばきばきばきばき。そんな爆音が空に弾け、硝煙は風にたなびき、宙を舞い、火炎があがり続けること十数分。聴衆は肩と肩をぶつけ、汗を流して嬌声をあげる。自分の汗は他人の汗となり、己の叫びは隣人の叫びとなり、長い冬の間、己の内側に秘めた冷たい負のエネルギーは歓呼の叫びとなって硝煙とともに大聖堂上空に霧消し、春の空に舞う。ああ、麗しきフィレンツェの春、は厳かにではなくこうして荒々しく始まるのです。MASA