La Cucina di Gian Paolo Belloni

昨年末にオープンした、Gian Paolo Belloniの”夢”、リグーリアの海を見下ろすリストランテに初参内。確か、昨年5月に「来月オープンするから来てね」と言われていたのだけれど、やはりイタリア、半開き状態で半年を過ごしていた模様。

空きっ腹を抱えて急な九十九折りの道を上ると、眼前に教会の鐘楼、その向こうは光る海。海岸沿いの右手には遠くフランスの山、運が良ければ左手海上にコルシカが拝めるそうで、これぞまさに絶好のロケーション。

高いコック帽にZeffirino時代のコックコート、カメラを向けるとこの道50年間に培った笑顔でどこから撮ってもGian Paolo。ペスト・ジェノヴェーゼ界の君主にして、最近はイタリア唯一のノルウェイ公認ストッカフィッソ・アンバサダーとしても活動する御歳71、まだまだ年金生活なんてとんでもない!と厨房に立つことは、その十指の爪が真っ黒なことからも伺える。

突き出しはサルデーニャはカルロフォルテのムシャーメ・ディ・トンノとイワシの甘辛いペーストを載せたクロスティーノ、前菜には、マグロ、タイ、カツオのタルタル三層仕立て(地場のハーブと果物叩き込み)、ストッカフィッソのガルファニャーナ風(スペルト小麦と黒オリーブ和え)、黄金の定番であるタコとじゃがいもは双方が互いの滋味をまとい、渾然一体とはこのことよと覚醒させられた逸品。

プリモには、”こどものほっぺた”を意味する白身魚を射込んだ円形のラヴィオリ、プッファテッリのサルサ・ジェノヴェーゼ、”絹の”と謳い文句のついたごく薄いラザニア生地にペスト・ジェノヴェーゼを絡めたマンディッリ、やや厚めの生地でストッカフィッソをくるんだ半月型のラヴィオリにアスパラの穂先を合わせた一品は醤油味を喚起させるこっくりした味わいに時空を超えたウマミの世界を想う。

セコンドのフリット・ミストは途中から同席したGian Paoloのバジル話、ストッカフィッソ話でお腹いっぱいとなり、完食叶わず。でも、食後のソルベット・アル・リモーネはこれでもかというレモン攻撃にテニスボール大のボリュームながら引き倒し状態で気がつけば完食。現時点で我が人生最高のレモン・ソルベとなった。

こんなお店に「興味のある料理人がいたらぜひ連絡を」とGian Paolo。前ローマ法王にペスト・ジェノヴェーゼを献上したリグーリア料理界の重鎮に教えを乞いたいと思われる諸氏、乞御連絡。mnm