Cacciuccoを探して@Viareggio

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訳あってリヴォルノ伝統料理のカッチュッコを食べさせる店を探しておりました。かつて数度、トライしたことがあるのですが、イカやタコのスミでどろどろだったり、魚が明らかに冷凍だったりと、これはうまい!というものに遭遇した試しがありません。各方面に聞いたところ、とあるリヴォルノの一軒に推挙の声が集まったのですが、月曜日営業していないということでNG。魚介料理店は往々にして月曜休みなのですが、今回は月曜も営業している店でないとだめなのです。

先日、偶然にもPanzano in Chiantiの肉店Dario Cecchiniで、ガルファニャーナの食の守護者Andrea Bertucciと再会。この窮状を訴えたところ、ヴィアレッジョの店を紹介してくれました。リヴォルノからピサまで範囲を広げて探していましたが、ついにヴィアレッジョに漂着。まぁともかく、試食しないことには何も始まらないと赴きました。

海岸沿いから一本入った道沿いにあるその店は、200年前の厩を改装したとのことですが、あちらこちらに飾られたアートフラワーと、強烈なマゼンタピンクのテーブルクロスで、どこか奥様趣味サロン風。レンガや石壁を活かしてシンプルにしたほうがいいのに...と思いますが、ヴィヴィッドな色を足し算していくのがイタリアでは常套だし、それよりも肝心のカッチュッコを食べないと。

まずは前菜に、軽く薫製をかけたカジキのカルパッチョ。墨色のキプロスの塩が薄く飴色がかった乳白の身に映えて綺麗です。次いで地元の伝統料理ムールの挽肉詰め。貝柱を傷つけぬよう身を切り開き、豚、牛、モルタデッラの種を挟んでトマトで煮込んだもの。肉がややぱさついていたので、トマトソースをたっぷり絡めていただきました。さらにゆでたガンベローネ、しらすのフリット、イワシのマリネなどの盛り合わせ。塩と酢で締めた後洗いおとしてオイルをかけたイワシは、脂の乗り具合という締め加減といい、日本のシメサバを思い出して遠い目をしてしまいました。

カッチュッコのための胃袋スペースを確保したいのに、「ほんのちょっとだから」とたっぷり二人前のスパゲティ・アッレ・ヴォンゴレ登場。貝殻は分厚く大きいのですが、身は小さいアサリ、しかし、旨味はしっかり引き出されています。塩辛いと思う向きもあろうかと思われますが、この濃さは慣れるとやめられないのです。さて、これでようやくカッチュッコ、と身構えた我々に、「カッチュッコは量がないと作れない。ほぼ同じ材料で2時間煮込む代わりに3分でできるズッパ・ディ・ペッシェでどうだ?」とシェフ。あれぇ...まぁいいか、同じ材料なら。

間を置かずして現れたズッパ・ディ・ペッシェは、イカ、ムール、ガンベローネ、パロンボが鮮やかなトマト色のスープの上にこんもりと盛られ、イカスミパンが添えられています。まずはスープを一口、おぉこれはなんという...あんまりしつこく大袈裟に書くとどこかの漫画みたいなので、このあたりはご想像にお任せしますが、とにかく美味しいのです。バランスの良さに脱帽です。カッチュッコだってズッパ・ディ・ペッシェ、煮込み時間が短かろうと美味しいほうがいい。

聞けば、4年前、ラヴェンナで開催されたズッパ・ディ・ペッシェ大会で優勝したこともあるとか。なるほど、とうなづいた我々。現時点で我々にとってのベスト・ズッパ・ディ・ペッシェであります。mnm

Masakatsu IKEDA
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池田匡克 Masakatsu IKEDA ジャーナリスト 1967 年東京生まれ。出版社勤務後1998 年イタリアに渡り独立。旅と料理のビジュアル・ノンフィクションを得意とし、イタリア語を駆使したインタビュー、取材、撮影、執筆、講演活動を日本、イタリア両国で行う。主な著書に「シチリア美食の王国へ」「イタリアの老舗料理店」「サルデーニャ!」「フィレンツェ美食散歩」「アマルフィとカプリ島」「Dolce!イタリアの郷土菓子」「世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ」など多数。 2003年度「シチリア美食の王国へ」がイタリア文化向上に貢献した出版物に送られるマルコ・ポーロ賞(イタリア文化会館主宰) 最終候補作品にノミネート 2005年よりイタリア国立ジャーナリスト協会所属 2011年株式会社オフィス・ロトンダ設立。現在代表取締役 2014年日本初のイタリアの旅と料理をテーマにしたWEBマガジンSAPORITA設立。国際料理大会Girotonno、Cous Cous Festに日本人として初の審査員に選ばれる

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