第六回Identita Golose開催

1月31日よりミラノで開催されたIdentita Golose、イタリア唯一のアルタ・クチーナ(高度に洗練された料理)のカンファレンスは、今年で6回目となりました。年を追うごとに登壇者が増え、日程も昨年は4日間と最長となりましたが、今年は2月2日までの三日間、登壇者数も若干ショートしています。

さて、メインテーマはIl lusso della Semplicita(シンプルさという贅沢)、言い換えれば、素材がすべて、だそうです。ことに、高価な素材よりも見過ごされがちな素材(たとえばにんじんとかたまねぎとか、パンとかオリーブオイルとか)に注目し、それらがどのように生まれ、ひいてはどのように環境や人間の健康に影響をもたらすのかを見つめ直そう、というわけです。

そこで初日に登場したのが、「安い素材を高度な技術で洗練の料理に仕立て、リーズナブルな価格で提供する」ことで一世を風靡したミラノ郊外の「D.O」のダヴィデ・オルダーニ。取材時に「安い素材とはいえ、そのなかでも上質なものを選ぶことが大前提だと付け加えるように」と言われましたが、そうするとキャッチコピーが長くなるので普段は割愛されているようです。ともあれ、ダヴィデ・オルダーニが今回のトップバッターというのは妥当な線であります。

そして、初日の目玉ゲストが、スローフード協会のカリスマ指導者カルロ・ペトリーニ。素材を見つめ直そうというテーマにこれ以上の適任者はいないでしょう。近著「Terra Madre」(母なる大地)を携えて登壇、「固有種の70%が消滅し、農家というものがすでに存在しない」イタリア農業の窮状を訴えました。

そのほかにアントニオ・カンナヴァッチュオロ(Villa Crespi)、マッシミリアーノとラファエロのアライモ兄弟(Le Calandre)、アンドレア・ベルトン(Trussardi alla Scala)、マウロ・ウリアッシ(Uliassi)などがメインホールでのレクチャーを繰り広げ、別ホールではIdentita di olio(オイルのアイデンティティ)をテーマにコラード・アッセンツァ(Caffe Sicilia)などが登場しました。

翌1日もメインホールのテーマは変わらず、サブホールでのテーマがIdentita di pasta(パスタのアイデンティティ)に変わり、最終日はメインホールでは今年のフューチャー州&国としてエミリア・ロマーニャとスロヴェニア、サブホールはヴァローナ主宰のパスティッチェリアがそれぞれお題となりました。

例年、初日に大物クラスが集中的に登場し、以降、なんとなくおとなしくなっていくのですが、今年はそれにも増して全体的に小粒になっている感があります。昨年より始まったIdentita Londonにも力を割かねばならないためでしょうか。それとも、イタリアのアルタ・クチーナ界の現状を映しているのでしょうか。主催者パオロ・マルキ曰く「数年来のスペイン料理界の圧倒的な存在感がここにきて薄れ始めている今がイタリア料理界にとってのチャンス」なのに...。