Ora d’Aria@Firenze

Via Ghibellinaのどん詰まり、もう少しでフィレンツェ外周通りというぎりぎり旧市街内にあったリストランテOra d’Aria。最初はAkaiaという魚料理店でしたが、1年後くらいに経営が替わり、シェフ、マルコ・スタービレによるクチーナ・クレアティーヴァの店として、伝統料理が席巻するフィレンツェで頑張ってきました。そして満を持してチェントロもチェントロ、ウフィッツィ美術館のすぐ裏という中心地に引っ越し、6月にリオープン。最初は4月、それが5月と延びた後ようやくの再開ですが、以前のようなやや没個性的な小宴会場のような雰囲気は消え、よりスタイリッシュな内装で、マルコの意図することが明確に打ち出されているようです。目玉はガラス張りの厨房で、最新の機器に囲まれて働く料理人たちを眺めながら食事を楽しめるようになっています。昨今ではこういう厨房は珍しくはなくなりましたが、作っている様子が見られるのはやはり良いものです。

ランチは、ノーマルポーションかタパスポーションかが選べ、ささっと食べたい人はノーマルポーションを一皿か二皿、いろいろ食べたい人はタパスポーションを好みで組み合わせることができます。選択肢は9種類ほど、さらにドルチェは3種類の中から選べます。もちろん全部食べてもいいのです。夜は一転してアラカルトもしくはコース料理。コースは同じテーブルの人全員で頼まなければなりませんが、70ユーロでドルチェまで5品か、50ユーロで同様に4品かの2種類。さらに70ユーロコースはハーフポーション(60ユーロ)も可能。マルコ曰く、オープンして夏いっぱいは色々と試行錯誤を重ねて、9月以降の本番シーズンに備えるそうですので、このメニュ構成は変更の可能性があります。

で、肝心のお味ですが、ランチをタパスで試した限り、どれも繊細ですっきりした味わいで、がっつり伝統料理とは全く別の路線。毎日食べるものではないけれど、たまに洗練されたものが食べたい時にはお勧めです。フィレンツェには本当の意味で創意工夫を重ねた新しい料理がなかなか発達しない上、内装は今風でも料理はひどいといった店が次々とでき、一度試してはみても、継続して行きたくなるような店はなかなか登場しません。そういう意味でも、新Ora d’Ariaは貴重な存在です。

ランチのテーブルクロスにはなにやらフランス語っぽい一文が刺繍されていました。マルコによると、「人を悪く言うとそれは自分に返ってくる」という意味だとか。前の店が口さがないフィレンツェ人たちに「すぐにつぶれるさ」と陰口をたたかれていたことを見返し、チェントロに進出したことを見せつけてのアイロニー。けしてマルコは喧嘩腰で皮肉を言っているのではなく、そのくらいの根性がないとこの街ではやっていけないってことですね。

このお店の情報は8月6日発売の「料理通信」9月号ワールドレポートにもご紹介しております。そちらもご覧くださいませ。mnm