Grani@Roma

 

まだ東京滞在中ですが、先日訪れたRomaで思ったこと、感じたことについてUP。景気が悪いのはイタリアも変わらず、やれ今年のバカンスにかける費用は対前年比30%減だったとか、外食費は同マイナス?%だとか、そうした噂にはことかきませんが、今年の5月、某記者会見で話を聞いた元ガンベロ・ロッソ社主ステファノ・ボニッリがいうには、そんな時代に料理人に求められているのは料理の知識や腕だけではない、経営者的能力とカラーを打ち出すセルフ・プロデュース能力だ、とのこと。レストランの個性を語るときに「コンセプト」というとフードビジネス業界的香りがして、なんとなく色眼鏡で見たくなりますが、今回ローマを訪れてそうではない町場の小箱リストランテ(トラットリア、ではない)が元気なのを目の当たりにしました。この際の元気というのは繁盛してるかどうか、というよりも行きたくなる店、という意味ですがおそらく繁盛もしているのでしょう。

銀座三越にも出店してますがパリでは「ネオ・ビストロ」あるいは「ビストロノミー」という言葉に代表されるように新感覚のビストロが流行っているとか。これはビストロとはいえいわゆるこてこてのトラディショナル料理を出すのではなく、きちんと勉強した料理人がちゃんとした料理を、しかもローコストで提供するというスタイル。そうした店では大抵日本人料理人がいることが繁盛の条件ともなっているようですが、トラットリアのようなトラディショナルどか盛りではなく(それも時にはいいのですが)きちんとした美味しい料理をしかも「ローコストで」食べたいという欲求はイタリア人の中にも確かに根付き始めているようです。

今回出会った料理人はGrani@ROMAのシェフ、ダニーロ弱冠30才。こちらパンテオン近くにある小さなリストランテですが、料理はローコスト&あっと驚くクリエイティヴ。それもそのはずダニーロはかの巨匠ヴィッサーニの厨房で学んだナポリ男なのです。写真は一見アランチーニですけどそうでなくて牛の赤ワイン煮込み、ブラザートのコロッケ仕立て。一口かじれば中からほろほろとブラザートがこぼれます。他にもあれ食え、これ撮れとあれこれ持って来てくれましたがどれも素晴らしかったのですがそのあたり中略。クリエイティヴとはいえ泡やら気体やらガスやらを多用するわけではなく根本はトラディショナル。リガトーニ・アマトリチャーナとかもちゃんと作るのです。

こちらもライトに仕上げてあるし、トマトソースもフレッシュ。ここではローマでたまに見かけるようなパスタ200g超というような暴挙には決して出ません。ハウスワインのフラスカティもあっと驚く目ウロコの美味しさ、とさまざまな点で今回ローマを見直したきっかけとなった店でした。この後に行ったSettembriniも同様でしたが、料理人の気持ちがすみずみまで行き届いている店では、料理人と話をしているだけで温かい気持ちになりました。こうした店に共通しているのはやはりオーナーシェフ、あるいは料理人が共同経営者であること。自分の店はどうあるべきか、という答えがあるようでない命題について日々考え抜くことこそ、一歩人に先んじるのか。キーワードはやはりそのあたりにあるのかもしれません。MASA