Mozzarella in Carrozzaの逆襲

昨年末のダイヤ改訂で、イタリア超高速鉄道EuroStarEVに乗ればフィレンツェから3時間で着くようになったナポリ中央駅です。5月以来久しぶりに駅に降り立ってみると駅構内は工事中だった前回よりもさらに明るく奇麗になっていてびっくり。いつものMaggioreでレンタカーを予約したところ、ES AVが到着するホームの端にこれまた奇麗な新オフィスが出来ていてさらにさらにびっくり。何せ列車を下りてからわずか5分で車のキーが手に入るのようになったのですから。ナポリ中央駅でのレンタカー・ピックアップは駅左手にある専用駐車場なのでオフィスからも徒歩2分。さらに駅から高速の入り口までわずか500mなので、「あっ」という間に渋滞知らずでアマルフィ方面へ向かう高速に乗っているのです。

で、向かったところがアマルフィ海岸のラヴェッロという町。かつてワーグナーが滞在したことからワーグナー音楽祭も行なわれるこの高台の町を10年ぶりに訪れ、日中幾つか用事をこなしたあ後夕食に向かうのはラヴェッロに来たら必ずよ寄りたい、というかこの町にはこの店ぐらいしかない母ちゃんトラットリア「クンパ・コジモ」。これまた10年ぶりの再訪でありました。女主人はまだまだ健在で常連客の注文取りと全テーブルの会計は彼女の仕事。壁にかかった写真を見るとその昔はマリア・カラスにそっくりの地中海系美人で、今も目鼻のあたりにその面影が見えかくれしております。

10年前この店で、モッツァレッラを頼んだところ天婦羅状態で出来ててびっくり。すると彼女が「あんたが頼んだモッツァレッラ・イン・カロッツァっていうのは揚げたモッツァレッラ。生が食べたいなら生を出してあげるよ」といわれて揚げモッツァレッラと生モッツァレッラの2種食べたことがあります。つまり10年ぶりの「クンパ・コジモ」はその時初めて知ったモッツァレッラ天婦羅「モッツァレッラ・イン・カロッツァ」へのリベンジなのであります。

このモッツァレッラ・イン・カロッツァとはモッツァレッラを薄切りパンで包み込み、溶き卵をつけて揚げた料理。おそらくは作り立てのフレッシュよりもちょっと固くなったぐらいのものを使った方がうまくできる、はず。で、10年ぶりに食べたそれは外がさっくり、中が熱々で衣のタンパク質の焦げ具合がなんとなく炙った厚揚げを思わせる味と食感。大きめのサツマイモの天婦羅大3切れの油を地元Ravelloの白で洗い流し、サラメ・ナポリターノ、コッパなどのサラミ盛り、次いでシンプルな骨付き仔羊のグリル、アニェッロ・スコッタディータ(原文ママ)とアマルフィ・レモンを使ったスカロッピーナ・アル・リモーネ。前者はちらりと唐辛子がまぶしてあるのがオリジナルだが、ローマのそれに比べると脂も肉質もややパワー不足。後者は子牛肉に粉をまぶして水分を逃さず柔らかくソテーし、レモンの香りと酸味プラス・バターでソースとした料理。アル・マルサーラ、アル・ヴィーノ・ビアンコなどがある主に南イタリア中心の薄切り肉の料理法で、ガルガのエリオが家でスカッロッピーナを作る場合は、バターに直接粉をつけて鉄のフライパンに入れる目ウロコの料理法をしますが、こちらのは粉がかなりダマダマになってましたが肉は柔らかくしあがってました。この店で何より美味しいのは野菜。トマトやサラダ野菜、自家製フライドポテトなど新鮮そのもの。やはり南イタリアは新鮮な素材を、シンプル極まりない調理法で食べるのが何よりも美味しい。MASA