ロケは続く...週間食卓日記@Firenze&Molise

11月某日
フィレンツェ市内撮影。昼は同行者の「どうしてもスパゲッティが食べたい」という希望で、ちょうど傍にあったYellowへ。大箱ファミレス、カメリエーラというよりはウェイトレスと呼びたい若いお姉さんたちが店内を巡回しています。先週に引き続き、注文するのはやはりspaghetthi alla carrettiera。2人分以上だとここはフライパンごとやってきます。食して曰く、「あぁこれは、なつかしの●プリチョーザの味」。にんにくたっぷりの甘いトマトソースがなんとも言えぬ郷愁を誘うのだそうです。そこから日本のバブル時代に華開いたパスタ屋談義が繰り広げられました。「今はこじゃれちゃってさ、なに食ってんだかわからないものが多いけど、あの時代にいいもの作ってやろうと頑張ったから今があるんだよな」と一同しみじみ。
夜はちょっとお疲れ気味だったので、和食みたいなものにしようとHanamiへ。しかし、にぎりの酢飯がどうも口に合わないということで厳しい評価がくだされました。ここではにぎりを食べたことがなかったのですが、今後も食べることはないでしょう。

11月某日
フィレンツェ郊外の工場撮影。昼は工場内のメンサ(食堂)で、ハムとチーズを包んだ半月状のクレープのようなものと、ゆでたひよこ豆。朝7時出発だったのでものすごく空腹で、てんこ盛りなのに完食。早起きは三文の得です。
夜はまたしてもVinaino。soprassata e cipolline in agrodolce、insalata、spaghetti alla carrettiera、spaghetti con pancetta e zucchine、ossobuco。もうすでに日常食の域に達しているとの評を頂戴しました。

12月某日
昨日と同じ、昼は工場内メンサ。昨日の残りなのか、それとも好評だったのか、例のクレープがありましたが、もちろんパスして今日はサフランのリゾットにしました。付け合わせはにんじん、いんげん、カリフラワーをゆでたもの。同席者は、サフランのリゾット、ヴェネツィア風レバー、サラダ、さらにゆで野菜を取り、トレイに乗り切らないほどの満艦飾。案の定、半分以上残していました。あれこれ食べたいのに、少しずつという注文ができないがための失敗です。
明日は早朝出発につき、夜は自宅で豆腐炒めにとどめました。

12月某日
ローマ経由モリーゼに向かいます。ローマで一件撮影を済ませた後、ドライバーに近所でさくっと食べられるところはないか、マクドナルドでもいいから、と頼んで連れて行ってもらったのが、セルフのカフェテリアDoppioZero。14時を回っていましたが、ものすごい混雑っぷりで、オーダーするのも一苦労かも、とぐったり。しかし、気の利いた店員さんのお陰で意外とすんなりいきました。薄いフォカッチャの上にレタスとラディッキオとチキンのサラダがたっぷり載ったものをテイクアウト。胡椒がたっぷり効いていてかりっとしたフォカッチャも美味しゅうございました。
夜、モリーゼ着、ホテルのレストランになだれ込み。サラミや生ハム、チーズ、ナスのパルミジャーナ風、ポレンタの黒トリュフ風味などの前菜盛り合わせと、挽き肉詰めのオリーブolive all’ascolanaをつまんでから、仔羊のグリル。ワインはカンパーニアのアリアニコの後、モリーゼのアリアニコ。若くてタンニンの主張が強く、しっかりとした脂の肉にはそこそこ合いました。

12月某日
モリーゼ撮影。昼は前回ロケハン時にも通ったトラットリアDiana。ここは魚介とピッツァが売りで、標高800mを越える山の中で魚介とはいかがなものか...ですが、田舎の肉料理が続くともうなんでもいいから違うものを、という気分になるもの。まだ着いて二日目ですが、この先が長いと思うとすでに気持ちが守りに入っちゃうんですね。というわけで、spaghetti alle vongoleを注文。水槽にはたくさんのオマールが元気に動き回っておりました。
夜はホテルのレストラン、金曜日だからとここでも魚介料理がメニューに並んでいます。イワシのフリット、ムール貝とアサリの白ワイン蒸し、エビとカラマリの串焼きを前菜に、その後、ピッツァを3種類、トマトと水牛のモッツァレッラ、ツナとタマネギ、ピリ辛サラミのディアヴォラ。赤ワインは地元のティンティリア。ドライバーの27回目の結婚記念日を祝して、最後にプロセッコで乾杯。

12月某日
モリーゼ撮影。昼はいつものDiana、リコッタとくるみのラヴィオリ、トリュフソース。この地域は黒トリュフの産地で、しかも安く、トリュフを使ったパスタ料理も10ユーロを越えることはめったにありません。
夜もまたDiana。というのも、ここはピッツァは夜のみなので、ピッツァを試すなら昼夜連続の訪店も致し方ありません。生ハム、サラミ、チーズなどの前菜の後に、アンチョビとケイパー、ディアヴォラなどのピッツァを注文。結論としては、期待したほどではなく、ここでピッツァは無理して食べなくてもいいということになりました。生地があまりにも頼りなく、具も平々凡々だったのです。しかし、何事も試してみないとわかりませんから、それはそれで良い経験でした。

12月某日
モリーゼ撮影。しかし、日曜日ゆえ、ほとんど仕事になりません。あんまり時間が余るので、8キロほど離れた山間にあるアグリトゥリズモへ。すぐ向こうの山並みはすっかり雪化粧、しかしそれ以外は人家も見当たらないどのつく田舎。ところが、店内に一歩踏み入れると人でいっぱい。目当てはチーズと肉料理のようです。他のテーブルを見ていると前菜の量が半端じゃない。チーズやサラミ、ブルスケッタなどが次々に供されていますが、我々日本人がそれをやるとセコンドまでたどり着けない怖れがあるので、前菜は残念ですがパス。アブルッツォとの境にいるので、パスタはキターラにします。ニョッキ好きのドライバーのみニョッキ。ソースはどちらも仔羊の煮込みです。卵入りのしこっとしたパスタは概ね好評でしたが、「やっぱりスパゲッティに敵うものなし」とも言われてしまいました。セコンドは仔羊とサルシッチャのグリル。サルシッチャは超粗挽きで、軟骨やレバーも入っていて味が非常に濃いのですが、塩気がちょうど良いので食べ疲れません。ガス入り水で割った酸っぱい赤ワインとともに、手づかみで堪能いたしました。
一段落した頃に、アコーディオンを抱えた少年が登場、なんの口上もなくいきなり弾き始めましたが、相当にお上手。にこりともせず、真剣な顔で何曲も弾きまくり、チップをもらって黙って去って行きました。山奥の不思議なアグリでありました。mnm