遅ればせながらの南米の記録その2 リマの続き

海辺に近いミラフローレス地区はいわばアップタウンで治安も(多分)よろしいのですが、旧市街へと足を踏み入れるとさすがにそこは大混沌の世界。タクシーの中にはおそろしく古いものもあるし、しかもメーターがついてないので値段もいちいち交渉だし、と書くと一見しんどいことばかりのようですが、生き馬の目を抜くようなラテン諸国に比べるとどこかおはちが開いたようなのんびり感がただよっています。「アルマス広場まで幾ら?」「10ソル」「さっきは8ソルで来たが?」「じゃ8ソル」というように別にヴェネツィアのゴンドラみたく値段きいてさらに値切って、というようなやり取りは別に必要ありません。以上会話は全てイタリア語を適当にしたスペイン語。スペインならばイタリア人の旅行者、ビジネスマンも多いのでイタリア語もかなりの確立で通じますが、南米ではさすがにちと無理。「プレーゴ?」などと聞き返そうものならペルーの人は???を連発してぽかんと口を開けてしまいます。南米人のスペイン語は汚くて分かりにくい、と以前スペイン人から聞いたことがありますがペルーのスペイン語は、もちろん会話の内容にもよりますが、大体分かります。しかし分からないときは全く分かりません。

アルマス広場近くにある中央市場周辺はパレルモほどではありませんが、やはり猥雑なるカオスのまっただ中。原産地らしく唐辛子やジャガイモ、トウモロコシは種類も多く、その後あちこちで食べることになりますが、それにもましてハーブの多いこと。カモミール、コリアンダー、ミント、さらに名も知らぬ地元のハーブの数々。ペルーは海に面しているので生さかなをレモンやタマネギ、レモンなどでマリネしたセビッチェが有名ですが、この市場の魚売り場はというとちょっとたじたじとなるような鮮度。肉売り場もしかり。ついでに市場のトイレに用足しに行って再確認したのは、衛生観念が南イタリアのそれよりも数段劣るということ。しかし市場に並ぶ食堂はどれもおいしそうでチキンカレーとでもいうべき「アヒ・デ・ガジーナ」や「セビッチェ」牛ハツの串焼き「アンティクーチョ」など庶民の料理はいずれもライスがついたワインプレート・ディッシュ。呼び込みも決して強引でなく、しかもちょっと恥ずかしそう。そんな控えめな美徳がペルーの人々にはあるようで、市場を歩いているだけでなんとなくあたたかい気持ちになるのです。MASA