1/2若いブロイラー

ベルリン旧市街の外れに、鶏を半羽丸揚げにする店がある。しかもドイツにしてはいさぎよい夜のみの営業。かつてベルリンの壁があった近くの暗闇にぼんやりと灯りがともる店の古い扉を押し、これまた古めかしいテーブルについてやおらメニューを広げてみると、これまたいさぎよいほどの簡潔さ。メニューにあるのは1/2揚げ鶏、キャベツのサラダ、ポテトサラダ、ソーセージが4種でうち1つはカレーソースをかけたカリーヴルスト。名物の1/2揚げ鶏は注文してから出て来るまで30分ほどかかるが、見た目はまさに読んで字のごとく油で揚げた半羽の鶏に黒パンが一枚。素にして簡だが卑ではない、という料理の典型。しかしこれにナイフを入れると外はパリパリ、中しっとり、しかも味付けは塩のみ。忘れられないこの料理はあっとおどろく謎のテクニックを駆使した上質なフライドチキンであった。料理名は1/2Jungmasthähnchen。Google翻訳してみると「1/2若いブロイラー」となる。「ブロイラー」を料理名にするとはこれまた脱帽するいさぎよさ。老舗の味。MASA