Santagostino23@ Firenze

アルノ川左岸、オルトラルノ・エリアのサント・スピリト地区にあるトラットリア。 創業以来50年以上が経つが、隣接する食料品店がオーナーとなってからコンセプトを一新しててこ入れ。いわゆるオーソドックスなフィレンツェ・スタイルのトラットリアとは異なるスタイルを打ち出して成功を収めている。そのスタイルとはローマでいうところの「クイント・クアルト」つまり内臓料理である。

フィレンツェ料理と同音異義語でよく語られる「クチーナ・ポーヴェラ」にトリッパがあり、ランプレドットがある。そうした典型的なフィレンツェ料理はもちろんのこと、茹でトリッパにセモリナ粉をつけてからりとあげる揚げトリッパ「トリッパ・フリッタ」、ローマ風料理ならば子羊の小腸を使った「リガトーニ・コン・パイヤータ」、内臓ではないがロンバルディアを代表する子牛の臑肉料理オッソブーコは、トマト煮込みの「ウミド」と骨の部分のみをローストした「オッソブーコ・アロスト」もある。さらには「アリスタ・ディ・マイアーレ」「キアナ牛のハンバーガー」また、通常オン・リストしてない内臓料理も時折メニューに加えられるがこれらは近代イタリア料理の父ともいわれたペッレグリーノ・アルトゥージのレシピ本「La scienza in cucina e l’arte di mangiar bene」通称アルトゥージ本からの解釈によるものが多い。近年イタリアではワンテーマ・ディナー「チェーナ・テマティカCena Tematica」が非常に盛んだが、サンタゴスティーノ23のアルトゥージ料理は、フィレンツェにおけるチェーナ・テマティカの走り的存在である。

とにかくサンタゴスティーノ23で食べるなら肉か内臓、ということになるのだが、イタリア料理に関心がある人ならばメニューを見てどうしても試してみたくなるのが「象の耳」ことOrecchia d’elefanteであろう。かつて辻静雄氏のエッセイで、北イタリアのブレッサノーネにある「Hotel Elefante」の象料理の話があったが、それは当然象を食べるわけではなく象も驚くほどの豪華料理、チロル風満漢全席のことだったが、このOrecchia d’Elefanteも象の耳を食べるわけではなく、象の耳を連想させるような特大の豚のカツレツCotletta di maialeのことである。薄く叩いた豚ロース肉をからりと揚げてさらには薄切りのポテトフライが山盛り。それだけでも揚げ物好きにはたまらないが、ここにアンチョビで作ったソース「サルサ・アチュガータ」をつけて食べるとなぜか気分はアジフライになる。豚、ポテト、アジフライという揚げ物好きの無間連鎖を楽しむなら。

 

Via Sant'agostino 23r, Firenze

Tel055-210208

12:30〜14:30、19:30〜22:30 月休

http://www.santagostino23.it/