スペイン・バル論1 La Bodegueta Provenza@BARCELONA

老舗酒場ラ・ボデグエタに新店誕生

バルセロナに滞在する際、ホテルはよほどのことがない限りパセジ・デ・グラシア周辺にしている。足の便やセキュリティ、取材先に近いことなどその理由はいくつかあるが、食事する場所にことかかない、というのが一番大きな理由である。市内を南北に走る大通りパセジ・デ・グラシア通りは両脇にブランドショップが並ぶ高級エリアであり、5〜6車線もある交通の要所。周辺にある飲食店は、ゴシック地区やボルン、ラバルといった旧市街に比べると比較的高級だが、その分上品かつ治安もよく、客引きするようなこともまずないので、カメラ片手に歩きながらでも安心して夜の食事に行くことが出来るのだ。

パセジ・デ・グラシア通りより西側に一本入ると、同じく南北に走るランブラ・デ・カタルーニャ通りがあるが、こちらは道路の中央が遊歩道となっており、飲食店のテラス席が1km以上続く大飲食店街となっている。そのランブラ・デ・カタルーニャ通りに「ラ・ボデグエタ」という時間を忘れたような古い半地下のバルがある。小さなカウンターの背後にはワイン樽が並び、グラスワインを頼むと樽から直接注いでくれる昔風のスタイルがとても心地よい店だが、先日プロヴェンサ通りを通ると「ラ・ボデグエタ・プロヴェンサ」という新店が誕生していた。本店のレトロぶりに比べるとプロヴェンサは現代風のモダンなインテリア。本店は酒焼けしたようなカタルーニャ人が集まるような店だがこちらは着飾ったカップルが中心、とすみわけもきちんとできている。しかしツーリスティックでないバルセロナの本格派バルでのメニュー表記はスペイン語でなくカタラン、つまりカタルーニャ語である。

 

Estrella Dammのグラス生ビール、カーニャCanya€2.00を飲んでアンチョビのマリネSeitons Marinats5.90を頼む。スペイン語ではアンチョビはAnchoasだがカタルーニャ語ではSeitonsとなる。新鮮なアンチョビをヴィネガーとオイルでマリネした前菜はスペインのバルの大きな喜びのひとつである。粉をつけただけのアーティチョークのフリットCarxofes Andalusa €8.60、スペインではフリットは「アンダルシア風」と表記されることが多い。バルセロナのバルの定番、ジャガイモのフリットにピリ辛ソースをかけたパタータス・ブラバスはどこのバルでも大抵おいてあるが「ラ・ボデグエタ・プロベンサ」の場合はオリジナルソースを使ったPatatas Bodegueta €5.90で、ナツメグなどの香辛料をふんだんに使ったスパイシーなソースだった。ムール貝のワイン蒸しはMuscl Delta €7.70、そしてパタータス・ブラバスと並ぶ超定番、日本のシシトウに似た小粒のピーマンの素揚げピメントス・デ・パドロンPebrots de Padron(カタルーニャ語の場合)€6.50は、ともすれば野菜不足になりがちなバル・クルーズでの貴重なビタミン源でもある。こうして見るとオーソドックスな定番料理の割に値段は決して安くは無いが、ごみごみした下町バルとは違い、インテリアもヴィンテージ+@のクールな構成。パセジ・デ・グラシア地区で落ち着いた夜を過ごすことができる新顔の登場である。

 

La Bodegueta Provença

C/ Provenza 233 Tel93-2151725

7:00〜翌1:45(土8:00〜、日祝13:00〜翌0 :45)無休

 

Masakatsu IKEDA
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池田匡克 Masakatsu IKEDA ジャーナリスト 1967 年東京生まれ。出版社勤務後1998 年イタリアに渡り独立。旅と料理のビジュアル・ノンフィクションを得意とし、イタリア語を駆使したインタビュー、取材、撮影、執筆、講演活動を日本、イタリア両国で行う。主な著書に「シチリア美食の王国へ」「イタリアの老舗料理店」「サルデーニャ!」「フィレンツェ美食散歩」「アマルフィとカプリ島」「Dolce!イタリアの郷土菓子」「世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ」など多数。 2003年度「シチリア美食の王国へ」がイタリア文化向上に貢献した出版物に送られるマルコ・ポーロ賞(イタリア文化会館主宰) 最終候補作品にノミネート 2005年よりイタリア国立ジャーナリスト協会所属 2011年株式会社オフィス・ロトンダ設立。現在代表取締役 2014年日本初のイタリアの旅と料理をテーマにしたWEBマガジンSAPORITA設立。国際料理大会Girotonno、Cous Cous Festに日本人として初の審査員に選ばれる