Girotonno2014マグロ料理対決第2戦、日本Vsスペイン
一夜明けて大会第2日目、カルロフォルテの港に作られた特設会場にはスポンサーでもあるサルデーニャの地ビール、イックヌーサの新作レモン風味のラドレルの試飲ブースや、サルデーニャ伝統の食材でもあるトローネ、ペコリーノ・サルド、ボッタルガあるいはグエッフスやパパッシーナスなどの伝統菓子を売るブースが立ち並び、大にぎわいを見せていた。シチリアあるいはサルデーニャ西海岸で大西洋ホンマグロ、トンノロッソが産卵するこの時期、カルロフォルテではマグロが旬を迎えるのである。
大会第2日目は残り2試合が立て続けに行われるが、まず前夜のフランス対アメリカ戦に続く第2戦となるのが日本対スペイン。ともに環太平洋と大西洋でともにマグロ料理先進国を自負するだけにいきなり注目の対決となった。日本代表として出場するのはミラノのIYOのICHIKAWA HARUOシェフ。実は昨年の優勝者でディフェンディング・チャンピオンである。現地ではすでに知名度高く、親しみを込めて「マエストロ」と呼ばれるICHIKAWAシェフは1954年生まれ。60年代に東京とロサンゼルスで研鑽を積み、90年代からヨーロッパに渡りボローニャ、そしてミラノで料理人としてのステイタスを築いてきた。この日会場で「おひさしぶりです」と声をかけられたのだが、実は10年以上前に当時ミラノにあった和食店ORIGAMIで邂逅したことを覚えていてくれたのだ。
一方対するスペイン代表はというと、ローマのMARZAPANEでシェフを努める若干24才の女性シェフ、アルバ・ルイスAlba Ruizと同じく20代の女性スーシェフ、マリア・ジュリア・マガーリオMaria Giulia Magarioの女性コンビでICHIKAWAマエストロとの年齢差、なんと30才超。今回の対決の中でも最も異色、というかギャップある組み合わせとなったが、先攻はまずスペイン代表のアルバで、登場した料理はなんとオッソブーコ・ディ・トンノOssobuco di Tonno。マグロの正肉の部分はタルタルでローストした赤ピーマンとアンチョビ・ソースというスペイン・タッチの味付けはさておき、なんとも度肝を抜かれたのが中央にそえられた生のマグロの骨髄。いわゆるオッソブーコなのだがこれを最後にすすれ、という。タルタルはカタルーニャのコスタ・ブラーバを思わせるような確かなスペインならではの味付けだったが、海の味そのものだった骨髄は最後に食べるのに賛否が分かれ、口を付けなかった審査員もいたが、概ね好評。審査委員長のパオロ・マルキはアルバの勇気と可能性、将来性を非常に高く買っていた。「海の豚」と呼ばれ頭や血、内臓など何も捨てるところが無いマグロは地中海を代表する食材だが、その新たな可能性を模索する意味でもアルバの提案は非常に興味深かった。
一方日本代表のICHIKAWAマエストロはというと、これまた観客の度肝を抜くサムライバーガーで登場。マグロのトレ、ヴェントレスカと赤身を牛肉代わりに使用、カモーネ・トマト、モッツァレッラ、マイアリーノ・サルドのベーコンをテリヤキ&ユズコショウのソースでまとめたハンバーガーには日の丸が添えられていた。試食後、当然のことながらコメントを真っ先に求められたのは日本代表審査員のSAPORITA。以下そのコメントを全文掲載する。
Io credo che nessuno di qua non si aspettava che un cuoco giapponese facesse questo tipo di presentazione. Divertente e coraggioso. Prima della gara ho parlato con maestro HARUO ICHIKAWA e suo carattere e’ allegro, aperto. Io darei complimenti allo maestro ICHIKAWA, perche’ molto coraggioso.
おそらくこの会場にいる誰もが、日本人料理人がこのようなプレゼンテーションで勝負するとは思っていなかったのではないでしょうか。試合前にマエストロと話しましたが非常にオープンで陽気な性格。この料理は彼の性格そのものです。なによりも彼のその勇気に賛辞を贈ります。
投票の結果はというと会場の圧倒的な支持を得て、日本8.50、スペイン8.25で日本代表マエストロICHIKAWAが2年連続で決勝に進んだ。SAPORITAの採点は以下の通り。
Giudice Tecnica(技術点) Presentazione(芸術点)
SPAIN 8 8
GIAPPONE 8 7
これでまず決勝にはフランスと日本が残った。残る試合は地元イタリア対ブラジル。これまた激戦が予想される。