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Tenuta Carretta@Piobesi d’Alba, Piemonte

ランゲ・ロエロ生産者新世代に聞いたピエモンテワイン界のあるべき姿

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去る6月6日、アルバのPalazzo Banca d’Alba(アルバ銀行会館)で行われた第一回目FWD food, wine & design開会記者会見で、テヌータ・カレッタのオーナー、フランコ・ミロッリオはこう語った。「経済危機のなか、イタリアはmade in Italyという称号でなんとか生き抜いています。ワインもファッションもそのほかデザインのあらゆる分野で。そして、分野は違えども、ほぼ同じ人々をクライアントに持っています。つまり、国や社会階層、嗜好という点で同じグループに属する人々が我々のクライアントなのです。ならば、ワイン生産者もデザイン業界も協力し、イタリア・ピエモンテという土地を舞台に成長していけるのではないか。たとえば、ピエモンテのワイン生産者はほとんどが小規模生産者です。なかには少し規模の大きいところもありますが、いずれにしても、大小さまざまな生産者が団結して、“何か”をやるということはありません。でも、それでは、個々のワイナリーとしては成長できても地域としての成長は進まない。そこで、ワイナリーが協力しあう場を作りたいと思ったのです。そして単にワインだけでなく、もっと広がる可能性を作りたいとデザイン業界とのコラボレーションを提唱しました」。

フランコは27歳。ミロッリオ家はブルガリアで服飾製造を柱とする大規模な事業を営んでおり、父親が営む服飾会社に就くべく経営学を学んでいたが、ある日、父親にワイナリーの経営に携わるようにと言われた。それが、外国で成功した父親が「故郷に帰る」ために85年に購入した、ロエロ地方ではかなり規模が大きく歴史あるワイナリー、テヌータ・カレッタだ。総面積70ヘクタール、うち35ヘクタールが葡萄畑で、ランゲにも2.5ヘクタールの畑を所有し、ロエロ・アルネイス、ファヴォリータ、シャルドネ、バルベーラ、ネッビオーロを栽培している。ロエロで製造するのは親しみやすいワイン、ランゲは長期熟成を楽しむバローロ中心だ。ワイナリーの名のカレッタcarrettaは方言で石を表すcarruから来ているとされ、ミネラルを豊富に含んだ白ワインに適した土地だと言われている。

ワイナリーの中心となるカンティーナは、半分が醸造貯蔵所、半分がレストランと宿泊施設となっている。どちらにもかなりお金をかけ、しかし、成金的な雰囲気はなく、腰をすえて長くやっていこうという意気込みが感じられる。ただ、地下貯蔵庫の一部を改造したギャラリースペースはキラキラとモダンでそぐわない感じがした。フランコによれば、人々の目を引くためにあえて全く異なる、ラウンジ的な雰囲気にしたらしい。全体が深い青色に塗られ、天井の低い空間は確かにそんな感じがしないでもないが...。実際に夜になるとまた楽しい場所になるのかもしれない。それに、ワインに限らず、アートの展覧会や音楽イベントをやるには結構面白い場所に思える。昨今、ワイナリーではこうしたアートイベントにも積極的なところが増えている。ワインもアートも心に直接働きかけるから、と誰かが言っていたように思うが、ともあれ、共通点を見いだしている生産者は少なくない。

フランコの話に戻ろう。彼がFWDを企画したきっかけは、数年前にとあるワインフェアに、バローロ・ボーイズならぬロエロ・ボーイズとして出展したことにある。20余りの比較的若い生産者が集まって出展することになったのだが、実際現地まで足を運んだのは3社だったという。地域として生産者と消費者との距離を縮めようという目論見だったのに、その第一歩である見本市にも消極的では、熾烈なワイン業界の生き残り戦に勝てない。その危機感がフランコの自社の枠を乗り越えた活動へとつながっている。たとえば、FWD開催と同時に、2014年にロエロ・アルネイス生産者組合の立ち上げに尽力した。農家、生産者、ボトリングの会社など会員は200を数える。一方、FWDは準備期間が少なかったせいもあり、25のワイナリーと10のスポンサー企業のみでの開催だった。いずれにしても、どちらも同じ問題を抱えている。横のつながりを強化していかに盛り上げていくか。それをクリアしなければ、ロエロの、ひいてはピエモンテワインの未来は危ういという。「まずはFWDをどう充実させていくかが課題です。今回はワイナリーとデザイン関連のイベントが中心で、食の印象が希薄になってしまった。ここにはたくさんのレストランがあり、秋はトリュフで有名なのに、それをうまく活かしていなかったというのが大きな改善点です」。イタリアでの村祭りにありがちな、身内だけで盛り上がる(飲食とダンスに終始する)イベントではなく、訪れた人がさまざまなかたちで楽しみ、その結果、地元に経済的な恩恵と未来に続くアイディアが生まれる。これが、ピエモンテワイン生産者新世代の目指す一つのかたちである。

About Manami Ikeda (325 Articles)
大学卒業後、出版社に就職。女性誌編集に携わった後、98年に渡伊。以来ずっとフィレンツェ在住。取材とあらばどこにでも行きますが、できれば食と職人仕事に絞りたいというのが本音。趣味は猫と工場見学。
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