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第3回パスタ世界選手権開催by Academia Barilla @ Parma

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イタリア料理のストックフォト10,000点超

去る6月12、13日、パルマのアカデミア・バリラでパスタ世界選手権が開催された。今年で3回目、世界23カ国から27名の料理人が参加した。出場者のほとんどは外国で活躍するイタリア人で、外国人はほんのわずか。一昨年開催された第一回では、日本人の山田剛嗣さんが並みいるイタリア人ライバルをおさえて見事に優勝したが、審査委員長を務めたアカデミア・バリラ所長のジャンルイジ・ゼンティ氏が「記念すべき第一回優勝者が外国人だったのは痛恨」などと今でも悔しがっている。

主催者であるアカデミア・バリラは、パルマの元バリラ工場跡に設立された食の研究機関である。因に、この工場跡地はレンツォ・ピアノの設計によってアカデミア・バリッラを含む複合商業施設となっており、アカデミア・バリラの隣にはプロシュート・ディ・パルマ生産者組合本部がある。プロ、アマチュア両方に向けてさまざまなコースを運営しているアカデミアには100人収容のホール、食材の感覚識別を学ぶラボラトリー、大小さまざまな調理実習室が地上階に、地下に11000点に及ぶ食関係の書物と資料を所蔵するライブラリーがある。選手権はその調理実習室を使い、各自制限時間40分内に完成させ、出来立てを隣室で控える審査員に自ら運び、質疑応答に臨むという形式であった。

料理は同じものを二皿、一つはプレゼンテーションの採点用、もう一つは試食用で、審査員5人が順番に試食を行う。調理中、参加者の多くは緊張し、気の毒になるくらい手が震える人もいた。ようやく完成したところで、今度は審査員から質問攻め。長くて10分程度だが、まず、料理名を説明し、その料理の内容を説明し、どうしてそのような料理を作ったか発想と定着を説明しなければならない。審査員5人のうち、1人はオーストラリアの料理研究家兼ジャーナリストでイタリア語をあまり解さないため、会話は基本的に英語である。英語が不得手な人はイタリア語。英語もイタリア語もできないという者も若干名いたが、話してこその場面では不利である。料理人は料理だけできれば良いという考えはこの場では通用しない。ブロークンでも勢いよく話すほうが熱意は伝わるものである。

中国で活躍する料理人は、イタリアとの違い(パスタのゆで加減は柔らかいものが好まれ、卵入りパスタが圧倒的に人気であるとか)について語り、北イタリアからロンドンへ移住した料理人は、イギリスではいかにイタリア料理店が儲かるかを論じ、スペインのマドリードに働く料理人は元々は会計士だったが、趣味が高じて料理人になったと告白。本当に千差万別だが、皆一様によくしゃべる。そして今回特に目立ったのは、ナポリ出身の若手で、イタリア料理の将来について憂える発言をしていた料理人だ。外国で働く彼は、イタリア料理がいかにグローバル化の波にさらされているか、このままでは食材、調理法ともにアイデンティティを喪失する強い危機感を抱いていると訴えたのである。パスタという食材は、そのもの自体、すでにグローバルな存在になっている。だからこそ、このような選手権も可能なのだが、パスタについて考えていくうちにイタリア料理とは何なのかと思うに至ったのだろう。

27皿の審査の結果、4名がファイナルに進んだ。前回の覇者で南アフリカから参加したジョルジョ・ナーヴァ(料理名「Il peperone del Capo incontra il meglio di Parma」使用パスタ:ディタリーニ・リッシ)、中国から参加のアルマンド・カポキアーニ(料理名「Rigatoni con crema di scamorza al tartufo bianco, funghi porcini, pomodorini Pachino e polvere di speck」使用パスタ:リガトーニ)、スイスから参加のルカ・トリチェッリ(料理名「Spaghetti con gamberi rossi di Sicilia al mojito」使用パスタ:スパゲッティ)、マルタから参加のジュゼッペ・ザノッティ(料理名「Orecchiette, crema di patate affumicate, salsiccia di maiale, essenza di aneto, chips di patate viola」使用パスタ:オレキエッテ)は、翌13日に再び実演。優勝したのは、モデナ出身の29歳、スイスで働くルカ・トリチェッリである。審査員が「このソースのトマトは...」と言った時に「トマトは使っていません。エビの旨味をしっかり引き出せばトマトは不要です。そして、素材はなるべく少ない種類でそれぞれの味を活かします」と応えたのが印象的だった。

外国のイタリア料理は現地の好みに合わせて素材や調味料も足し算傾向になりがちだが、ルカ・トリチェッリはコンフォルミズムに陥らず、目指す料理にブレがない。バリラ社のパオロ・バリラ副社長が言う「外国でイタリア料理に携わるということは、イタリア料理のアイデンティティとカルチャーを守り伝えること」を文字どおり実践している。この選手権では、独創性やオリジナリティという点も重要だが、それ以上に評価されるのが、イタリア料理としての芯がしっかりしているかどうか。外国人の参加はハードルが高いが、あえて挑戦する外国人が増えれば、この選手権はもっとユニークで層の厚いものとなるだろう。

About Manami Ikeda (325 Articles)
大学卒業後、出版社に就職。女性誌編集に携わった後、98年に渡伊。以来ずっとフィレンツェ在住。取材とあらばどこにでも行きますが、できれば食と職人仕事に絞りたいというのが本音。趣味は猫と工場見学。
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