Trattoria Flor@三津浜、松山

松山市駅からローカルな伊予鉄に揺られること約15分、やがて三津の駅に着く。三津の港、三津浜は古来より愛媛松山の重要な港であり、江戸時代には松山藩の水軍が置かれていたほどであった。現在はというと、鯛飯、あるいはジャコ天といった松山グルメのキーワードとなる魚介類の重要な漁港である。その三津駅前にある一軒家イタリアンがFLOR(フロア)だ。シェフ徳永孝はフィレンツェに学び、地元である三津に戻ってこの店を開けた。ハーブ、ズッキーニ、ナス、ピーマン、ミニトマトなどは無農薬の自家菜園。急な階段を上った2階にあるレストランはシェフ徳永が2ケ月かけて作り上げたハンドメイド、ハンドビルトのポップな空間。三津駅の駅舎で使われていたテーブルや扉をゆずりうけハンド・ペインティングしたインテリアは、イタリアのどこかの港町にありそうな、親戚の海の家を思わせるような空間が広がっている。そんな空間のせいか、FLORの二階から灰色の三津の空を見ていると、昔旅した田舎町に戻ってきたような、なぜかとてもノスタルジックな気持ちになるのだ。

前菜盛り合わせの後はタコのリングイネ、ジェノヴェーゼ・ソースとこの日漁師から「借りてきた」というクロメバルのアクアパッツァ。前者はタコとバジリコの相性のよさで、後者は新鮮そのものでしまったクロメバルと、大アサリ、酸味豊かなトマトのコンビネーションで三津の海を感じさせてくれる。日によってセコンドにはカッチュッコが登場し、プリモには「ミツハマーナ」というオリジナルがあるが、これはカマボコの原料であるエソを使ったソースというから地物、レア物が好きなイタリア料理探訪者にはたまらないメニューかと思うが、これはまた次回。ヤコポ・ポリのグラッパでしめて徳永とともにFLORのすぐ裏にある「練や正雪=ねりや しょうせつ」へジャコ天、ショウガ天、大竹輪を買いにいく。その場で頬張りたくなる衝動を抑えて鞄にそっとしのばせれば、松山市内からのワインデイ・トリップにも似た三津の黄金ランチは大団円を迎える。

愛媛県松山市住吉1-5-1 2F
Tel089-9521454 火休

 

Masakatsu IKEDA
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池田匡克 Masakatsu IKEDA ジャーナリスト 1967 年東京生まれ。出版社勤務後1998 年イタリアに渡り独立。旅と料理のビジュアル・ノンフィクションを得意とし、イタリア語を駆使したインタビュー、取材、撮影、執筆、講演活動を日本、イタリア両国で行う。主な著書に「シチリア美食の王国へ」「イタリアの老舗料理店」「サルデーニャ!」「フィレンツェ美食散歩」「アマルフィとカプリ島」「Dolce!イタリアの郷土菓子」「世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ」など多数。 2003年度「シチリア美食の王国へ」がイタリア文化向上に貢献した出版物に送られるマルコ・ポーロ賞(イタリア文化会館主宰) 最終候補作品にノミネート 2005年よりイタリア国立ジャーナリスト協会所属 2011年株式会社オフィス・ロトンダ設立。現在代表取締役 2014年日本初のイタリアの旅と料理をテーマにしたWEBマガジンSAPORITA設立。国際料理大会Girotonno、Cous Cous Festに日本人として初の審査員に選ばれる