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ジェノヴァ風ペストの誘惑 Antica Osteria Vico Palla@GENOVA

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大港湾都市ジェノヴァの近代的なベイエリアの片隅に、高い壁に囲まれて周囲から隔絶された庶民的な一画モーロ・ヴェッキオがある。その裏通りにあるのがアンティカ・オステリア・ヴィーコ・パッラ、一説によれば1621年から1628年にかけてジェノヴァに滞在していた画家ファン・ダイクはこのオステリアで過ごすことを好んだといわれている。そのファン・ダイクが食べていたのは当然のことながらストッカフィッソであろうことは想像するに難く無い。

このヴィーコ・パッラは駐車場から近いということも車で旅する際に立ち寄る大きなメリットなのだが、この日も平日の昼だというのにすでに満員。待つ間に手書きの黒板を凝視し、店のメッセージを読み取る作業は一番楽しい時間でもある。シチリアのパネッレの異母兄弟でもあるひよこ豆の揚げ物パニッサ、さらにズッキーニやイワシなどのフリット・ミスト。イタリアの港町巡りとはフリットをたずね歩くようなものでもある。ジェノヴァは14世紀にはすでにパスタの工業化がはじまり、シチリア、ナポリと並ぶ大生産地となっていたが、まだ産業革命前の家内制手工業時代、ジェノヴァの小さなパスタ工房ではさまざまな形態の手打ち、というか手作業パスタが発達した。例によって名著「Atlante dei Prodotti Tipici – LA PASTA」(RAI ERI)をひもとくと、ジェノヴァのパスタは以下のタイプに分類される。

Ravioli, Trenette, Battolli, Bavette, Brichetti, Fidelini, Gasse, Mandilli de sea, Natalin, Pansotti, Scucuzzuなどなど、未だ見ぬ未体験パスタも数多い。さらに近郊には前述のマイナー品種に比べるとPicagge, Corzettiといったややメジャーなパスタもあり、そのバリエーションの豊かさではイタリア広しといえどもジェノヴァの右に出る街は容易には見つからない。

当然ヴィーコ・パッラでも誰もが期待するのはパスタなのだが、この日はMandilli, Pansotti, Trofiette, Ravioliがあったのでクルミのパンソッティとマンディッリ・アル・ペストを頼む。前者は海に面していながらも平野が極端に少なく山間部が多いリグーリアらしい山のパスタ。後者はジェノヴァならではのバジリコ・ペーストだが、ジェノヴァで食べるペストはなぜこう色鮮やかで香り高く、舌触りもよいのか?ジェノヴァのペストは近郊プラにあるバジリコの一針二葉の和若葉を使うのが正統らしい。ジェノヴァのオリエンタル市場を見て回ると、どの店でも黄緑色の小さなバジリコを売っているのが目につく。ヴィーコ・パッラでは日替わりでトロフィエッテやバヴェッテはもちろん、その他珍品パスタに出会える確率も高い。さらに前菜にあるのが「カッポン・マーグロ」。ギネス記録を持つジャンパオロ・ベッローニのそれには及ばなくとも、ちゃんとしたポーションできちんと食べられるのは貴重な存在。

匡克 池田
About 匡克 池田 (1145 Articles)
1967年東京生まれ。イタリア国立ジャーナリスト協会会員、フォトジャーナリスト。日本で出版社勤務後独立、1998年よりフィレンツェ在住。「シチリア美食の王国へ」「イタリアの老舗料理店」「フィレンツェ美食散歩」「伝説のトラットリア、ガルガのクチーナ・エスプレッサ」など著書多数。2011年に池田愛美と株式会社オフィス・ロトンダ設立。国際料理コンテスト「Girotonno2014」「Cous Cous Fest2014」で日本人初の審査員となる。 http://www.office-rotonda.jp https://www.facebook.com/ikedamasa
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