ストリードフードの殿堂、Mangiari di Strada@MILANO

リーマンショック〜ローコスト・フード〜パニーノ&ピッツァ再評価というここ5年の流れから、イタリアにおけるソウルフードともいうべき「チーボ・デッラ・ストラーダ」つまりストリートフードが近年ブームである。イタリア半島北から南、あらゆる地方に独自のストリートフードがあるのがイタリアの魅力である、ということは肯定的には地方ごとの食のバリエーションが豊かであるともいえるが、否定的に見ればその地方でしか食べられないというデメリットもある。生物多様性=ビオディベルシタとはスローフードの世界でよく使われる世界だが、イタリアは食の分野に置けるビオディベルシタに非常に富んだ国なのだ。

ミラノにある「マンジャーリ・ディ・ストラーダ Mangiari di Strada」のオーナー、ジュゼッペ・ゼンはそうした一連のストリート・フード・ブームが到来するはるか昔からイタリア全土のストリート・フードをテーマにしたセルフサービスのレストランを営んでいる。ジュゼッペがいうには北はヴィピテーノ(トレンティーノ・アルト・アディジェ)から南はパンテッレリア(シチリア)のストリード・フードを揃えており、黒板に書かれたメニューを見てみると確かにパーネ・カ・メウサ(シチリア)、パニーノ・コン・ランプレドット(フィレンツェ)、ブランダクユン(ジェノヴァ)、ポルペッテ(ミラノ)などなどイタリア半島南船北馬ありとあらゆる地方の路傍の食が詰め込まれている。パーネ・カ・メウサの作り方を厨房でのぞくと、新鮮そのものの子牛の肺(ポルモーネ)と脾臓(ミルツァ)を使い、ラードではなくオリーヴオイルを使って炒める。味付けは塩こしょうのみで、シチリアと同じゴマつきのパンを使い、仕上げにカチョカヴァッロと、マリタータ仕上げならリコッタを、スキエッタ仕上げならレモンをしぼって食べる。

パレルモの、例えばアンティカ・フォカッチェリア・サン・フランチェスコやヴッチリアの屋台を見たことがある人なら、大鍋にラードが煮えたぎってふつふつといっている中から脾臓を取り出し、ぎゅっと脂をしぼってから食べるというハードな場面を覚えているだろう。それにくらべるとジュゼッペ・ゼンは「うちの場合はラードでなくオリーヴオイルを使っているのでより軽く、しかも注文が入ってからアル・モメントで仕上げる」という。パレルモの味に郷愁を覚える猛者ならば、ジュゼッペ・ゼンのパーネ・カ・メウサは物足りないかもしれないが、逆に言えばより軽く、現代風に仕上げた、ということになる。他にもトリエステ風ブッフェ、ボルツァーノ風クラウティ入りヴルステル、カポナータなどなどミラノに居ながらにしてイタリア一周ストリートフードの旅が楽しめる珍品奇品満載。