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Natale前にひっそりと“死者のパン”

Pan dei morti

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10月後半のミラノ。パスティッチェリアのウインドウにはパネットーネが姿を表し始める。ハロウィンの飾り付けをしているところもあるが、それと同時にクリスマスに向けてパネットーネを売り込む店が多い。大きくて目立つパネットーネを見ると、否が応でも、年末に向けての気ぜわしい気分にさせられるが、その陰に隠れるようにひっそりとパン・デイ・モルティ(死者のパン)が並べられているのを見るとちょっとほっとする。

パン・デイ・モルティは、11月1日のOgnissanti(諸聖人の日)から2日のCommemorazione dei Defunti(死者追悼の日)にかけて食べるものとして、ロンバルディアで作られる菓子である。全国に同じような趣旨の伝統菓子があり、名前はOssa di morto(死者の骨)だったり、Fave dei morti(死者の豆)だったり、トスカーナの南では、Pan co’ santi(聖者のパン)という名のくるみとレーズンの入った菓子パンがあるが、あまり頻繁に見かけるものではない。いずれにしても1日の夜に死者への供物として食卓に並べるのが習わしだったという。

ロンバルディアのパン・デイ・モルティは、売れ残ったビスコッティなどを細かく崩し、刻んだアーモンド、砂糖、レーズン、干しいちじく、オレンジピール、シナモン、ワイン、ココアパウダー、卵白、イーストなどを混ぜ合わせた生地を成形して焼く。細長い楕円で、両端を少しとがらせて底面にオブラートを貼るのが伝統の形。柔らかめの生地を絞り出して成形する方法もあるらしい。油脂は使っていないが、アーモンドのこくがしっかりとあり、食感もしんなりと柔らかい。

この季節にミラノを訪れたら、おやつに試してみることをお勧めする。華々しさはまったくないが、素朴でじんわりとした甘みがそろそろ寒くなって来た頃になんだか嬉しい気持ちにさせてくれる、郷愁の味である。

About Manami Ikeda (325 Articles)
大学卒業後、出版社に就職。女性誌編集に携わった後、98年に渡伊。以来ずっとフィレンツェ在住。取材とあらばどこにでも行きますが、できれば食と職人仕事に絞りたいというのが本音。趣味は猫と工場見学。
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