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ラディッキオ・ディ・トレヴィーゾ・タルディーヴォ I.G.P ~ ヴェネトの賜物“冬の花” ~

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味の特徴は「苦味」と表現されがちだが、“苦い”ラディッキオは出来損じ。それは「苦味」であってはならず、限りなく“心地よい”風味であるべき。ラディッキオ生産に情熱をかける生産者は謂う。適正な土と気候、土地に湧き出る自然水から育つラディッキオは、決して苦さを感じるものではない。

ヴェネト州、トレヴィーゾ県を中心とし、ヴェネツィア県、パドヴァ県にまたがる地域にて生産される冬の野菜、ラディッキオ。

『冬の花』と表現されるが如く、寒い冬季間に彩りを添える、まさに、華。鮮明な赤紫色と、相対照的な真っ白さとの2色のコントラストが見た目の特徴だ。食べると独特の甘さを含んだ風味、そして“クロッカンテ”と表現されるコリコリッとした歯応え。生食しても加熱してもそれぞれに旨みが化す。見た目、食感、味、ともに他のどんな野菜にも当てはまるものは、ない。

ラディッキオはチコリの仲間で、イタリアではヴェネト州以北、各地にて生産される。土地ごとにその土地ならではのラディッキオが存在し、各々の産地名を掲げつつ、形状、風味を異とする。

そのなかでも、飛びぬけて注目度の高いものが、原産地呼称I.G.P.にも認定されている、ラディッキオ・ロッソ・ディ・トレヴィーゾ・タルディーヴォ I.G.P.Radicchio Rosso di Treviso Tardivo I.G.P.だ。つまり、トレヴィーゾ産赤ラディッキオ・タルディーヴォ種。

I.G.P.の認定を受けるため、各農家では厳しい統制に従いつつ、それぞれ独自の考えのもとに、生産活動が行われる。生産地域はヴェネト州内トレヴィーゾ県(15コムーネ/自治体)、ヴェネツィア県(5コムーネ)、パドヴァ県(2コムーネ)の3県22コムーネ内に限られており、その区域内の土壌において、苗植え、生産、出荷がされる必要がある。土地の持つ特徴が全て生産物に影響するわけだ。

パダーナ平原の北側に位置する同地域は、非常に水に恵まれた地域である。北山間部ドロミーティ山脈より沿岸部ヴェネツィアのあるアドリア海に注ぎ込む何本もの河川の流れ、そして地下から湧き出る自然水、石灰石岩浸食や沖積層による永い年月を経て形成された土壌がこの土地を支えている。さらには、周囲を囲んだ丘陵からの影響による冬期間の高低差の激しい気温の変化など、須要たる全ての自然環境条件が相関する。

ラディッキオが育つこの土地は、苗の生育から出荷に至るまで、この土地の気候と、そして土地の水なしには成立しない。

路ゆく路に容易に目にする『ラディッキオ街道』の表示看板は、同産物と土地との強い繋がりを示す。当然の事ながら、ラディッキオ生産に関わる人も圧倒的に多い地区である。ほぼ通年に渡る、この冬野菜にかける彼らの愛情と熱意は非常に熱いものだ。

同地区内のラディッキオ農家の作業を追ってみる。ラディツキオ農家としては、比較的大きな規模を持つ、トレヴィーゾ県とヴェネツィア県の境界に位置するベッリア家。メンバーは、ご主人のクラウディオさん、奥さんのファビオラさんを中心に、間もなく92歳で現役のエッリアさん(クラウディオさんのお父さん)、ご夫婦の2人息子であるダミアーノとフランチェスコが家族構成だ。

もともと野菜及び酪農などをする一般的な農家であったのを、エッリアさんの代に少しづつその主軸をラディッキオ生産へと移行。クラウディオさんが経営の主導者となってからは、ラディッキオ農家として特化し、冬季はタルディーヴォ種を主力としながら、他各種のラディッキオ類を生産する。生産量こそラディッキオほどではないが、春先にはやはり、同地区の特産品である、バドエーレ産アスパラガスI.G.P.、ピゼッリ(エンドウマメ)De.Co. をはじめ、季節野菜を扱っている。

生産及び出荷活動は、同家族全メンバーを中心に、親族や関係者などが関わる。冬季の繁忙期には国外からの季節労働者なども加わると、作業人員は総勢15名以上にもなる。関わる誰もが、いいものを作ろう、という意識が非常に高い。真面目で働き者気質のヴェネト人の典型ともいえる。

春先の土おこし、土づくりを経た後の苗植え作業から、生産活動は本格始動する。まだ真夏前の暑い太陽のもと、同年度の冬を見越した作業だ。7月、苗の準備が完了。天気との相談をしながら、作業がスタートする。

専用トラクターに人が配置され、一定間隔に動く穴に苗をひとつひとつ入れていくと、トラクターの後ろには、きれいな苗の列が完成。

一苗たりとも、一間隔たりとも無駄のないよう、その後ろには常に人が続く。植えこぼれのないように注意するのだ。トラクターの動きは止まってはくれないので、この作業中はお喋りもそこそこに、皆、真剣顔。

苗植えが終了すれば、ある程度のケアは加えつつも、ほぼ自然の力に委ねるのみ。ちなみに今年度2014/2015年は夏らしい暑さが訪れることなく、さらには雨量の多さも重なり、当たり年とは言い難い年となっている。

さて、品名の『タルディーヴォ』というのは『晩生種』という意味を持つが、『早生種』ももちろん存在する。それが『プレコーチェ種』だ。

早生種だけあり、8月の終わりから9月に収穫のスタートを迎える。まだ日も気温も高く、暑い日の続くなかでの収穫及び作業所での出荷作業であるので、冬野菜のイメージからは相当遠いところにあるのが現実だ。プレコーチェ種の出荷は比較的シンプルに、畑から収穫した後、それらの外葉を外して流水にて洗浄し、箱に詰めて出荷される。

反して、その後に続くタルディーヴォ種の出荷作業は、非常に特徴的だ。主作業の開始は11月中旬。順を追って紹介する。


-畑からの収穫

夏を越して冬の足音が確実となった頃、I.G.P.の規定によれば、畑に霜が降りてからが収穫シーズンの幕開けとなる。

水をたっぷり含んで重く、歩くのも困難な泥状の畑から、背丈40-50cmほどある株を根元ごと掘りおこす。畑は気をつけないと足をとられるくらいの状態だ。それらはまとめられて作業場に運ばれる。

-軟白工程

まず、ここでは、おおまかに根についた泥をおとしつつ外葉の何枚かを取り除き、高さをほぼ揃えながらカゴの中に整理しながら詰める。それを流水の流れるプールに根を垂直方向に整列させて浸す。

流水プールは屋根のある暗い場所が望ましい。これは、収穫後に雨などによる葉の損傷を防ぐためでもあるが、最大の目的は、光を遮断することにより、葉の持つクロロフィル色素の活動を抑え、葉先に鮮やかな赤色を発色させるため。そして、固い繊維質は軟弱しながらも、水を吸い上げることによりクロッカンテな性質となり、ラディッキオ特有の歯応えと味わいを生み出すことに起因する。浸水期間は、最低でも2週間ほどを要し、気温が下がると色の深さもぐっと増してくる。そして最大のポイントは、自然の地下水を汲み上げて利用される水だ。地下水は常に一定の温度が保たれるため、蛇口をひねって出てくる水温は17-18℃ほど。夏は冷たく、冬場は水が温かく感じる。

生産の作業のなかでも、非常に重要ともいえる段階だ。それは、その商品価値である特徴を際立たせる部分であるから。しかも、同工程は同地区の自然水でなければ、それの持つ風味の特徴には到達しない、という土地独自の自然の力に由来するものでもある。

洗浄・剪除工程

前述の工程を経ると、水に浸った根からは新たなひげ根が発根する。これが出荷準備の合図だ。さらに別作業場に移し、市場に出回る形状にするのだ。

黒くなった外葉を一気にはがす。その中心部に残る鮮やかなコントラストを呈した部分が可食部だ。ここまでの工程で、畑から収穫された一株のうち、可食部として残るのは全体の40%以下と言われている。

そして、根元についている主根を専用ナイフできれいに削る。I.G.P.にて規定されている同野菜は、一株の重さが100g以上、長さは12-25cm、主根部分の太さは3cm以上でその長さ6cm以内に統一すること、とされる。さらに、葉は鮮やかで深いワイン色と白の鮮やかなコントラスト、甘みの中に隠された少々の好ましい苦味を持つこと、という外形・外観及び食味も必須要素だ。

ようやく姿かたちが露わになったラディッキオは、きれいに洗浄され、箱詰めされる。出荷時には、I.G.P.のマークのついた生産者番号及び製造番号の入ったシールが必ず添えられる。製造管理も大切な義務だ。多くの人の手間と時間、毎年同様の品質を保つための試みと労力が、ラディッキオ栽培を支えている。

 


 

ラディッキオが市場へ出回り始めると、生産各地では、毎年恒例のサグラ(収穫祭)が次々と開催される。生産地区内12か所において、スタートは11月中旬、最後のサグラは3月後半まで続き、生産者及び地元の人たちの悦びと労い、そして次年のシーズンへの希望等が内含されたお祭りだ。

サグラでは、その年の生産物に対する品評会、展示即売などが催されるが、来場者の楽しみはそこで振る舞われるラディッキオを使った料理を味わうこと。各地のサグラではそれぞれに趣向が凝らされながらも、近年では、地元の料理人や団体との取り組みによる、大がかりな晩餐会、地元料理店のシェフによる饗宴、若い料理人を育てるための料理コンテストなども繰り広げられる。

仮設会場とは思えない、丁寧かつ繊細に仕上げられた料理の数々を目にし、味わい、ラディッキオの持つさらなる魅力を再確認する場ともなる。

この時期、地元の各料理店にて、ラディッキオを使った皿に出会う確立は100%。街場のメルカート(市場)内、各店舗での取り扱い率もほぼ完全に近い。もちろん家庭の食卓でも同様。様々な料理に活用されるラディッキオだが、定番料理の美味しさは万古不易。

代表的なものとしては、生食としてのインサラータ(サラダ)、リゾット、そして形状を生かしたグリル、クロッカンテな白い下部を使ったフリットなど。それ自体の持つ固有性が最も上手く表現されるところだと思う。

ヴェネトの冬にまさに華を添える “冬の花” 。シーズン到来、だ。

 


 

なお、ベッリア家のラディッキオは2014/2015年度の今冬、日本に向けての出荷が2年目を迎えている。昨シーズンに同家を訪れ、この土地でしか叶わない品質を実際に感じて惚れ込んだ、野菜のこだわり人が輸入者だ。地元でも美味しさの違いをはっきりと感じるほどの上質のラディツキオを、ぜひ一度手にとっていただきたい。

ルコラステーション 畝田謙太郎氏

千葉県八街市大関219-4  Tel; 043-442-7909 Fax; 043-440-0235

 

 

 

 

Aki Shirahama
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ヴェネト州パドヴァを拠点に活動しています。
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