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PROGETTO EHIMEの現状と問題

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ここ2年ほどいろいろなつながりがあって足を運ぶ機会がある愛媛県で「イタリア料理で愛媛を変えよう」というスローガンのもと愛媛イタリア化計画〜PROGETTO EHIME プロジェット・エヒメが動きだし、これまでのところSAPORITAとしてもさまざまな形でサポートを試みてきた。しかしながら、スローフード運動に代表されるように草の根運動で地方自治体と生産者、レストラン、ボランティアが一体となって活動を広げるイタリアにくらべるとその活動はまだまだ前途多難の様相を見せている。

今年の7月に愛媛県に招かれて「地理的不利を有利に変える、イタリアに学ぶ食材をテーマとした地方活性化モデル」というテーマで話をさせてもらったことがあるがその時は生産者を中心にダイレクトな反応があり、「イタリア料理&食材」というキーワードのもと、貴重で興味深いケーススタディとして愛媛が動き出すかと半ば期待を持って見つめていた。地元レストランが中心となり、食材生産者や県、市などの地方自治体、銀行、地元企業などもそれぞれがそれぞれの得意分野で自分たちのメリットとなり、また消費者や地元住民にとってもプラスとなる活動を続けることがゆくゆくは地域にとって大きな花となる、そのような高い理想を持って始まった活動であった。

他府県でもイタリア料理をテーマに東京に進出している地方自治体はあるが、食材の宝庫という点においてもイタリア料理店の数でも愛媛にはそうした先達と並び、独自性を打ち出すだけのポテンシャルがある、そう感じていた。しかし、である。実際に動き出してみると県や市の思惑に従わないと自由な活動ができず、助成金もおりない。諸手を上げて賛成してくれる地元企業も賛同者も少ない。食を通じて文化交流をしようと手を差し伸べてくれているトスカーナの小村、ガルファニャーナの呼びかけに応じることが出来ず、食をテーマとしたミラノ万博を迎えた2015年2月、日本における食のムーブメントの一例としてミラノで世界にPRする貴重な機会を与えてくれようとしたIdentita Goloseの呼びかけにも賛同者、支援者がなく応じることができない。2015年11月、イタリアからジャーナリストや審査員を招いて愛媛発のイタリア料理を味わってもらう「イタリア料理コンテスト」も企画しているがこれも予算がなくて先が見えない。草の根活動を続けても結局は現実の壁を越えられず、理想は日に日に小さくなる一方。こうした現状をいまつぶさに見ている。

イタリアにおけるスローフード運動しかり、いわゆる食材での村おこしとは本来それを本当に希少であり美味しいと感じる地元の人々が、より多くの人々に知ってもらいたいという思いから出た素直な欲求であり、そうした思いは食品偽装などの問題が身近にある現代、無言のまま人々の間に伝播してゆくものなのであろう。いわゆるB級C級グルメなど、その賛否はともかくとして地元の人がこれは日本一、と胸を張って料理や食材を誇りに思う地方自治体は数多いが愛媛の場合、それはジャコ天であり鯛メシであり、残念ながらまだイタリア料理ではない。そしておそらく、プロジェクトに関わる人の多くがまだイタリアに足を運んだこともなければ現地でイタリア料理を口にしたことも無い。それで果たして他者に食材を通したイタリア的なメッセージ、を伝えられるものなのだろうか?卵が先か鶏が先か、美味しい料理があるから日本中から人が訪れるのか人を呼びたいから料理で地方を活性化するのか。ようやくともりかけた新しい火を消してしまうのか、弱いながらも絶やさぬように守っていっていつか大きな明かりとするのか。

イタリアの場合、例えば文化財修復ひとつをとってみても文化財は無限にあり、修復は半永久的に続く。国の予算は元々少ない上、無限の文化財修復に払う予算はない。そこでどうするか、というと地元企業や有力企業がこうした文化的プロジェクトを援助するのである。フィレンツェの洗礼堂の修復費用を出したのはエミリオ・プッチであり、ローマのスペイン広場の修復はブルガリが担当した。それはつまり企業や社会の成熟度に比例することでもあるが、愛媛は果たしてどうなるのか。企業の規模が違うと言えばそれまでだがやはり支援がなくてできませんでした、となればそれは単に実行委員会の責任ではなく、社会全体の成熟度の問題である。また、そうした成熟度は現状トスカーナの小村ガルファニャーナのほうが遥かに高いといわざるをえない。PROGETTO EHIMEの本当の問題はここにあるような気がする。

http://progettoehime.jp/

匡克 池田
About 匡克 池田 (1167 Articles)
1967年東京生まれ。イタリア国立ジャーナリスト協会会員、フォトジャーナリスト。日本で出版社勤務後独立、1998年よりフィレンツェ在住。「シチリア美食の王国へ」「イタリアの老舗料理店」「フィレンツェ美食散歩」「伝説のトラットリア、ガルガのクチーナ・エスプレッサ」など著書多数。2011年に池田愛美と株式会社オフィス・ロトンダ設立。国際料理コンテスト「Girotonno2014」「Cous Cous Fest2014」で日本人初の審査員となる。 http://www.office-rotonda.jp https://www.facebook.com/ikedamasa
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