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第9回Olio Capitaleに行ってみた

9° Salone degli Oli Extra Vergini Tipici e di Qualita

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去る3月7日から10日までの四日間(最終日は半日だったので、正しくは三日半)、トリエステで第9回Olio Capitaleが開催された。トリエステ商工会議所が主催するエクストラ・ヴァージン・オリーブオイル見本市である。通常、見本市というものは業界内のバイヤーを対象としていることが多いが、このオリオ・カピターレは一般人向けで、興味ある人なら誰でも入場料(6ユーロ)を払って入ることができる。試飲はもちろんのこと、気に入ったオイルを購入することもできる。つまり、試飲即売会である。

この時期、フィレンツェではちょうどTasteが開催されていた。これも一般人対象の試食即売会で、同じく第九回目を迎えた。出展者数は回を追う毎に増えて今年は300、なのに会場(Stazione Leopolda)は初回から変わらず、今や非常に手狭で、あまりの混雑ぶりに危険なのではと思うが、人混みが大得意のイタリア人はとても楽しそうに盛り上がっていて問題はないらしい。

対して、トリエステのオリオ・カピターレは出展者数こそ250(因に出展者リストを数えたら242)と負けていないが、さすがにイタリア北東の国境の街まで出かける人は少ないと見え、会場(Stazione Marittima)は適度な人口密度で快適に見て回ることができる。テイストのように、試食をするのにじっと順番を待つということもほとんどなく、逆に呼び込まれることのほうが多い。出展者も持ってきた商品をなるべく売り切ってしまいたいので、最終日は値引きも当たり前である。

テイストのようにいろいろな食材があれば試食もあれこれと選べて楽しいが、オリオ・カピターレはオリーブオイルだけである。たまにオイル漬け保存食やピスタチオやジュースなども置いているところがあるが、主役はオリーブオイルだから、試飲を重ねていくと結構きついものがある。それでも、これだけのオイルを一度に味わうことができるというのはなかなか得難い機会だ。

出展者の内訳はほとんどが南イタリアである。断然多いのがプーリア州で101と4割以上を占める。次いでシチリア(25)、バジリカータ(23)、カラブリア(16)と続く。中部のオリーブオイル産地のトスカーナ(10)、ウンブリア(5)、リグーリア(7)などは影が薄い。この見本市は大手メーカーではなく小規模生産者が集まるという趣旨である上、トスカーナなどは国内外の販売網がすでに確立している生産者も多くこうした見本市に参加するメリットがあまりないのだろう。

南イタリアは量産オリーブオイルの生産地というイメージが強い。最近は、そのイメージを払拭しようと、品質重視を掲げる生産者が増えてきている。プーリア、シチリア、そしてサルデーニャも国内各地で開催されるオリーブオイル品評会で高い成績を収める生産者が出ている。彼らはオイルの収量よりも個性を引き出すために、実が完熟する一歩手前で収穫し、酸度を低く抑えるためのさまざまな手段を試している。地場品種の見直しも盛んで、ただでさえイタリアはオリーブの品種が非常に多いとされているのに、さらにまた聞き慣れない品種名が増えている。

Giovanni Lombardi農園は、1700年代半ばにその土地の領主がプロヴァンスから取り寄せて領民に栽培させたペランツァーナという品種を復活させた。一般に売り始めてまだ2年目で、これから知名度を上げていくと若いミケーレ・ロンバルディは言う。代々続く農園だが、量産オイルからの転換はこうした若い世代の気づきと努力に負うことがほとんどだ。

しかし、若い世代だけではなく、老練の農家も負けてはいない。40年、50年、60年もの経験を持つ農家や農産物に携わった専門家が、地元の医師の呼びかけに応じて、“真に体のことを考えたオリーブオイル”を作ろうと団結、Med in Storというブランドを立ち上げた。Alimenti Mediterranei di Stornara、ストルナーラ発地中海食品という意味だが、Made in Stornaraにもかけたネーミングだ。発起人の一人であるFedele Alboreaは、農家ではないが長年トマト加工会社で働き、農産物食品業界に明るい。「日本には、特定保健用食品(トクホ)という認定制度がある。イタリアでも同じ制度を作るように働きかけるべきだ」と言う。

イタリアならではの“遺跡もの”も出展していた。ポンペイのワイン、パエストゥムのモッツァレッラと並ぶ、シチリア・アグリジェントの神殿の谷のオリーブオイルである。世界遺産である神殿の谷では新たに開墾することはできない。しかし、何百年と生き続けるオリーブの木が点在しており、地元の生産者がシチリア州の管轄下で、神殿の谷のオリーブからオイルを製造しているのである。縄文杉かと思うような巨木は、分析の結果、現存する品種に同じものはなく、幾つかの品種の祖先であることしかわかっていない。ともかく何世紀も手入れをされずに生きてきたため、まずは実をつけるように丹念に剪定をすることから始まったという。そのオリーブオイルDiodorosは、今回あっと言う間に売り切れてしまったらしい。

オーストリア帝国の港町としての栄華はすでに色褪せて久しいけれど、春まだ浅いトリエステは名物の強い北風ボラさえ吹かなければ、のんびりとした良いところである。オリオ・カピターレの機会に訪れてみるのも良いだろう。来年は3月5日〜8日の開催が決まっている。

 

 

 

 

About Manami Ikeda (323 Articles)
大学卒業後、出版社に就職。女性誌編集に携わった後、98年に渡伊。以来ずっとフィレンツェ在住。取材とあらばどこにでも行きますが、できれば食と職人仕事に絞りたいというのが本音。趣味は猫と工場見学。
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