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パーネ・ディ・アルタムーラDOP取り消しの危機

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パーネ・ディ・アルタムーラというDOP認定のパンをご存知だろうか?アルタムータとはプーリア州ムルジャ地方にある地方都市だが、香ばしいパンの名前で全国的に名を知られている。イタリアで地名付きのパンといえばこのDOPパーネ・ディ・アルタムーラとIGPのパーネ・ディ・マテーラ、同じくIGPのパーネ・カザレッチョ・ディ・ジェンツァーノが長らく3大パンとして知られていたが、近年では2009年にDOP認定されたシチリア州はエンナのパニョッタ・デル・デッタイーノや、スローフードのプレシディオ認定食品である同じくシチリアはカステルヴェトラーノのパンなどがある。

パーネ・ディ・アルタムーラは2003年にDOP認定されてからというものその知名度は飛躍的に向上し、現在ではEATALYの成功もあってイタリア全国各地で比較的簡単に手に入るようになった。その原料は地元産の硬質小麦「アップーロ」「アルカンジェロ」「ドゥイーリオ」「シメート」と天然酵母、塩、水だけで作り、石造りの薪釜で焼く、これが生産者組合の規定で、EUからDOPの認定を受けている。この地元産の硬質小麦により皮は硬く、しかし中はふんわりと香り高く独特の黄色い生地が食欲を誘う、これがパーネ・ディ・アルタムーラ本来の姿である。さらに分類するなら二つ折りにして焼き上げた「パーネ・アッカヴァッラート」、地元の言葉でいうなら「ウ・スックアネーテ」と、低く成形して焼いた「ア・カッピッデ・デル・パードレ・デ・シモーネ(僧侶の帽子)」の2種がある。

そのパーネ・ディ・アルタムーラがなぜ現在DOP認定取り消しの危機に面しているかというと知名度の向上により生産量が増えたことで、地元産以外の小麦を使用している生産者が増えたからである。

長らく地元ムルジャの食の知名度向上に貢献して来た地元の食文化研究家オノフリオ・ペペ Onofrio Pepeによれば現在生産者組合に加入してる60件のパン工房のうち規定を遵守しているのは8社のみで1日に合計200kgのパンを焼いているが残りの52社は1日合計60t、つまり上記8社合計の実に30倍のパンを日々生産しているが、これはDOP規定にある4種の硬質小麦を外国から輸入し使用しているからだという。つまりわたしたちが日々EATALYなどで購入して口にするパーネ・ディ・アルタムーラの実に73%はDOP規定からすれば違法に作られたパーネ・ディ・アルタムーラなのだ。

2003年にDOPに認定されて以来地元生産者組合には政府から補助金が交付され、加盟生産者も増えたが、もう一度12年前に戻って生産者を厳しく選別して原点に立ち直る必要がある、そうしないとパーネ・ディ・アルタムーラはその価値を失っていずれ消滅してしまうだろう、とオノフリオ・ペペは警告している。

匡克 池田
About 匡克 池田 (1161 Articles)
1967年東京生まれ。イタリア国立ジャーナリスト協会会員、フォトジャーナリスト。日本で出版社勤務後独立、1998年よりフィレンツェ在住。「シチリア美食の王国へ」「イタリアの老舗料理店」「フィレンツェ美食散歩」「伝説のトラットリア、ガルガのクチーナ・エスプレッサ」など著書多数。2011年に池田愛美と株式会社オフィス・ロトンダ設立。国際料理コンテスト「Girotonno2014」「Cous Cous Fest2014」で日本人初の審査員となる。 http://www.office-rotonda.jp https://www.facebook.com/ikedamasa
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