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トラットリア、オステリア、リストランテ概論

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イタリアのレストランは幾つかの形態に分かれているが、イタリア料理がその歴史的背景から非常に複雑なのと同じく、時としてそのカテゴライズの複 雑さにとまどう旅人も多い。一般的な分類としてトラットリア、オステリア、リストランテ、ピッツェリア、バール、エノテカ、ワイン・バー、ターヴォラ・カ ルダなどがあり、さらに最近ではパニノテカ、スパゲッテリア、ピアディネリア、フリッジトリアなど専門店的も増えてきたが、とにもかくにもそれが果たして どのような形態のレストランなのか把握してから出かけないと、イタリア料理は楽しめない。

実際のところイタリアで着席してゆっくり食事を楽しむならオステリアかトラットリアかリストランテ、という選択肢になるが、ミラノ在住のジャーナリスト、アントニオ・ピッチナルディ氏の名著「ディツィオナリオ・ディ・ガストロノミア」によればその区分はこう定義されている。まず、オステリアとは本 来量り売りのワインを、簡単なつまみと一緒に飲ませてくれる場所。ヴェネツィアに多い立ち飲み居酒屋「バーカロ」はオステリアと呼ばれることも多く、フィ レンツェではメッシタとも呼ばれる。近年ではスローフード協会が発行するガイドブック「オステリエ・ディタリア」の普及に伴い、ローカルなワインやチー ズ、希少食材などを食べさせてくれる地域密着型のオステリアが増えてきた。

トラットリアとは本来街道筋などで御者や旅人をもてなす旅籠屋として発達し、やがて料理を提供するようになった店で、伝統的な郷土料理を出すこと が多い。イタリア以外の国でもオステリアやリストランテに似た呼び方をすることは多いが、トラットリアに似た言葉は存在しない。つまり生粋のイタリア生ま れのレストラン形態であり、トラットリアにこそイタリアの郷土料理のあらゆる要素が凝縮されている。イタリアを代表するレストラン・ガイド「ガンベロ・ ロッソ」では郷土料理を出す優秀な店には、星の代わりに書名に由来したエビのマークを与えて表彰し、その最高峰には3本エビ「トレ・ガンベリ」が与えられ る。

リストランテは、オステリア、トラットリアに比べるとインテリアからサービス、ワイン、カトラリーにいたるまでワンランク上の高級店。郷土料理を リスペクトしつつも他の地域や時には外国料理の要素も取り入れ、伝統料理というよりもシェフ料理であることも多い。そうしたリストランテを評価するガイド ブックは前述の「ガンベロ・ロッソ」の他に「エスプレッソ」などがあり、外国発としてはやはり「ミシュラン」の影響力が大きい。

そうしたレストランの形態を念頭に置いて考え、さらに地域性を組み合わせればその店では何を頼むべきなのか、メニュー構成が自ずと見えてくる。例 えばヴェネツィアのオステリアならバッカラ・マンテカートかポレンタ。フィレンツェならばクロスティーニ・トスカーニかサラミ盛り、アッフェッターティ・ ミスティだろう。トラットリアならば地域性はより濃厚になり、その土地を代表する郷土料理がずらりとメニューに並んでいるはずだ。ボローニャならばタリア テッレ、ローマならばカルボナーラかアマトリチャーナ、ナポリならばヴォンゴレと、パスタひとつとってみてもその地域性は如実にあらわれる。そしてリスト ランテはトラットリアと異なる非日常の空間である。メニューから季節感、旬の食材、シェフのメッセージ性を読み取り、膨大なリストからワインを選ぶ。旅は 計画している時が一番楽しい、といわれるが、日本でもイタリアでも、レストランに行く前からガイドブックや料理書を(できればイタリア語で)読み解いてシミュレーションを重ねれば、レストランで過ごす時間はいっそう濃密で充実したものとなる。

(2013年ダイナースクラブ・イタリアン・レストランウイーク公式サイトCi Sono収録)

匡克 池田
About 匡克 池田 (1161 Articles)
1967年東京生まれ。イタリア国立ジャーナリスト協会会員、フォトジャーナリスト。日本で出版社勤務後独立、1998年よりフィレンツェ在住。「シチリア美食の王国へ」「イタリアの老舗料理店」「フィレンツェ美食散歩」「伝説のトラットリア、ガルガのクチーナ・エスプレッサ」など著書多数。2011年に池田愛美と株式会社オフィス・ロトンダ設立。国際料理コンテスト「Girotonno2014」「Cous Cous Fest2014」で日本人初の審査員となる。 http://www.office-rotonda.jp https://www.facebook.com/ikedamasa
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