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イタリア縦断鉄道の旅00はじめに(無料配信)

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美しく広がる車窓に心ときめかせ、まだ見知らぬ街の降車駅に思いを馳せる。トラブルなく時間通りに終着駅につくと、真っ先に出迎えてくれるのは笑顔が優しい赤帽さん、ホームに並ぶ列車はどれも顔が写るほど磨き込まれ、構内には焼きたてのパンの香りが漂う。ああ、この街でも何かいいことがありそう。

こうした快適なヨーロッパ鉄道旅行をイタリアにも求めるのは難しい。とのっけから書くと旅の意欲をくじいてしまいそうだが、それでも本書を手にとってくれた奇特な方は、そうした事実を知りながら、あえてイタリア鉄道旅行に踏み出そうという勇気と行動力に満ちた、イタリアという国を愛する方なのだと思う。

事実イタリア鉄道の旅は一筋縄ではいかない。イタリア語のみのアナウンス、遅延、キャンセル、ストライキ、さらに予測不能なもろもろのハプニングと、一朝一夕にはイタリを理解できないのと同様、イタリア鉄道を使いこなすのは簡単ではない。それは鉄道がイタリア社会の縮図だからである。

ある時列車が遅れに遅れていたのにアナウンスも何もなかった時、車内の乗客が一斉にお互いの列車の乗り継ぎ時間や、目的地の情報などを交換しあう光景に出くわした。するとその場にいあわせた上品な婦人がこういった。「こういう時にこそ、私たちは助け合わなければいけないのよ。それがイタリア人」

組織の不備は個々の力で補うというイタリアの日常でありふれた光景は、列車内でも恒常的に繰り返される。それは人と人とのコミュニケートを何よりも重要視する社会だからであり、自分から行動する習慣が身に付いている国民性だからである。黙って自動券売機で切符を買い、自動改札を抜けて、誰とも口をきかずに目的地で下りる。そうした旅の仕方は、イタリア鉄道の旅とは180度異なる。

だって、そうでしょ。イタリアではまず最初に切符売り場のおじさん(時にご婦人)から切符を購入しなくちゃどこにもいけないんだから。おじさんが優しかったのか、つっけんどんだったのか、お釣りを投げてよこしたのか、デザインひげだったのか。そうした光景は旅の記憶となって生涯残るが、機械が相手じゃ思い出にもならない。とはいえ、言葉の問題やら日本とは違う習慣やらで戸惑うことが多いのも事実。本書はそうしたイタリア鉄道の旅を快適にするための指南書であり、反面教師でもある。役立つところは次回の旅の参考になるかもしれないし、失敗例はべからず集として活用することもできる。

そうしたハードルをひとつ越える旅にイタリア鉄道の旅はどんどん快適になる。そうすれば旅の組み合わせも自由自在、普段とはひと味違ったイタリア鉄道上級旅行が楽しめるようになるのだ。

本書ではイタリア半島からシチリア島まで東奔西走南船北馬、山奥から海辺まで、大都会から寒村までいずれも鉄道を利用してイタリア中をくまなく旅して回った。そのルートはエリア別に5つ。ルート通りに旅するのもいいし、自分でオリジナルのイティネラリーを開発するのもいい。そうすればイタリア鉄道の旅はますます充実するはずだ。

さて、鞄に荷物と好奇心、それに少しだけの冒険心を詰め込んだら準備はできたも同然。アームチェアーを離れて未知なる土地へ、今出発のベルが鳴り響く。イタリア旅行の真実は鉄道の旅で見つけよう。

※データは2007年10月当時のものです。

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匡克 池田
About 匡克 池田 (1161 Articles)
1967年東京生まれ。イタリア国立ジャーナリスト協会会員、フォトジャーナリスト。日本で出版社勤務後独立、1998年よりフィレンツェ在住。「シチリア美食の王国へ」「イタリアの老舗料理店」「フィレンツェ美食散歩」「伝説のトラットリア、ガルガのクチーナ・エスプレッサ」など著書多数。2011年に池田愛美と株式会社オフィス・ロトンダ設立。国際料理コンテスト「Girotonno2014」「Cous Cous Fest2014」で日本人初の審査員となる。 http://www.office-rotonda.jp https://www.facebook.com/ikedamasa
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