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イタリア縦断鉄道の旅01イタリア鉄道上級旅行のススメ(無料配信)

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第二次大戦後の社会復興において、イタリアは交通の基盤を鉄道でなく自動車に求めたことはその後のイタリア人のメンタリティも大きく変えることになる。私の知り合いイタリア人は「タバコを買いに行くのもクルマ」と公言して憚らないし、私が鉄道で旅するというと「何でまた、そんな変わったことを?クルマのが楽なのに」といわれることもしばしば。

事実イタリアは自他ともに認めるクルマ社会であり、都市は鉄道駅を中心には発達してこなかった一方、街と街をつなぐ国道や高速道路網はくまなく整備されており、故に誰もが鉄道よりクルマで移動したがる。それに鉄道は遅れるし信用できないから、と。それは一体真実なのだろうか?

確かに旧国鉄時代はどこの国もそうだろうがサービスの向上といった言葉には縁遠く、元々組合が強いお国柄だけにショーペロと呼ばれるストライキもしょっちゅう。イタリアを鉄道で旅する際、最初に覚えなければいけないイタリア語はショーペロだ、なんて笑えない話もあるほど。しかし、別にイタリア国鉄の肩を持つわけでは全然ないが、近年のサービスの向上とシステムの変革ぶりにはめざましいものがある。

イタリアを代表する超特急エウロスターESに3年も乗っていなかったとしたら、とまどってしまうことも多いと思う。それらは全て近年のイタリア国鉄民営化がもたらした恩恵である。

旧イタリア国鉄、フェロヴィエ・デッロ・スタートFerrovie dello Stato(FS)は1991年より株式会社フェロヴィエ・デッロ・スタートFSとして生まれ変わり、構造改革と分割民営化が始まった。FSはホールディング・カンパニーであり、他のFS系企業の株を保有するが、FSの株式は100%国が保有している。

鉄道総延長、16,178キロ(標準軌)、うち10,688キロが電化される。旧FSは幾つかの子会社に分割されたが、2000年6月に誕生したのが鉄道の運行を担当するトレニタリアTrenitalia(www.trenitalia.com)である。思えばFSの近代化はこのトレニタリアとともに歩んでいる。

サイトからのインターネット予約は、今やごく当たり前。昔は切符売り場の行列が乗車前の一仕事だったが、現在は日本からでも出発前にネットで予約できるようになっているが、ただしエウロスターES以外は駅で発券作業をしなければいけないのがまだ改良点か。

そのES、振り子走法ペンドリーノの相性で知られる時速300キロのイタリア超特急だが、最近の車掌はパームトップで清算や検札作業をしている。ネット予約なら番号を告げるだけ。メールをプリントアウトして持参する方法もあるし、携帯にSMSで番号を送ってもらうこともできる。2007年中にはデビュー予定の第四世代ES、ETR600系は車内無線LAN完備の予定なのでこれも楽しみである。

このESのサービスの向上も分割民営化の賜物であろう。1等車ならば乗るや否や飲み物、スナック、おしぼり(ウェットティッシュだが)、新聞のサービスがあり、全席に置いてあるFS機関紙「RIFLESSI」を眺めて過ごすのもいい。現行ETR500系とその最終形であるエウロスターAV、は座席にコンセント完備、トイレはバリアフリー、バール&レストラン車両ありと、いたれりつくせり。ちなみに二等車は水もくれない。上級旅行は常に一等車からはじまるのだ。

その他トレニタリアでは会員になればマイレージも貯められるし、ネット予約では「イタリアどこでも19ユーロから!!」というトレーノOKや「フランス、スイス、ドイツなど29ユーロで外国へ!!」というプロモーションなどあり、思わず「おお」とうなって買ってしまいそうになる。

もうひとつ、新世代FSを代表するのが1998年に誕生したグランディ・スタツィオーニGrandi Stazioni(www.grandistazioni.it/)だろう。これはミラノ中央駅、ローマ・テルミニ駅など国内の主要13駅を運営、管理する会社でベネトンやピレリなどイタリアを代表する企業が40%の株を保有している。こちらも活動が非常に活発で、その代表例が2000年の聖年を期に生まれ変わったローマ・テルミニ駅。

その昔、はじめてイタリアを鉄道で旅したのはテルミニからナポリ行きのインテルシティだったが、雰囲気も物騒なら電車もボロかった。電車がボロいのは今もまだ健在だが、あの雰囲気はすっかりなくなり、明るく健康的なショッピングモールのある都会の駅に変貌した。現在はミラノ中央駅が改装中。こちらも設備の老朽化が叫ばれていただけに、ファシズム建築はそのままに内部を全面改装する予定。24時間ビデオ監視システム、バリアフリーなどなど。

とはいえイタリアを旅するのはミラノやローマなど大都市間を走るESだけでの移動は不可能。他の列車も乗りこなすことが必要だが、列車の値段とヒエラルキーが下がるのに比例して、快適度も下がるのは階級社会のイタリアならでは。

ちなみに他にどのような列車があるかというと、まずインテルシティICおよび新型のインテルシティ・プラスIC Plus。これは基本的にESを補足する長距離急行で昔ながらのコンパートメント形式が多い。ESが停まらない街に出かけるのには必須。同様に長距離急行としてヨーロッパ諸国とイタリアを結ぶエウロシティECや夜行寝台エウロシティ・ノッテECNなどがある。

同じく国際列車としてはスイス・イタリアの合弁企業チザルピーノCIS(www.cisalpino.com)がある。車両には第二世代ES、ETR460、480系が使用されているのでイタリアのあちこちで見かけることも多いはず。

T-Bizは近年導入されたローマ〜ボローニャ〜ミラノを結ぶビズネスマン向け特急で車両はCISと同じくETR460、480を使用。

エウロスターCITYことESCは、2007年に導入されたアドリア海を行く特急で、客車は従来のIC車両をリスタイリング。と、ここまでがいわばイタリア鉄道のセリエA。

セリエBには何があるかというと、まずエスプレッソE。これはシチリアと本土を結ぶなど長距離急行で車両はICなどと同じ。各駅で遅延が増し、シチリアに着く頃には数時間遅れ、ということもままある。

インテルレジョナーレIR。州間を走る急行。路線によってはIC並の編成のことも。ショーペロでも運行保証、全てにおいて最優先されるESの恩恵はありがたいが、そのしわ寄せを受けるのはIC、次いでE。基本的にこのIRは地方を走るのでそうした中央の人気路線の遅れによるしわ寄せとは無縁だが、だからといって遅れないわけではない。急行ディレットDも同様。

レジョナーレR。いわゆる州内を走る近郊線の各駅停車。ディーゼル車両あり、年代物の一両編成あり、はたまた最新車両ありと何がでてくるかお楽しみ。近郊線なので遅れても大したことはない。

さらに地方にはローカル線が幾つもあり、山岳鉄道が地元の学生や通勤客を乗せ、今日も元気に走り続けている。

無事に切符を手に入れたら、あとは駅のホームにある黄色い刻印機に通し、列車へと乗り込むだけ。コンパートメントや相席の場合、車内の検札にも挨拶「ブォンジョルノ」は忘れずに。網棚に荷物を揚げる際、女性が困っていたらイタリア人だろうが何人だろうが、さっと近寄って助けてあげるのは男の仕事。逆に女性は荷物が重ければ「スクーズィ・・・」と男性に頼めば誰も嫌な顔せず、にこにこしながら手伝ってくれるだろう。それもレディ・ファーストが徹底したイタリア社会の縮図である。こうしたイタリア人の習慣が分かって、コミュニケートがうまくとれるようになれば言葉は例え話せなくたって(話せたほうがもちろんいいが)さらに楽しくなる。

果たして旅の行く手にはどんな出会いが待っているのか。イタリア人ともに移動し、イタリア人と一緒に美しい風景に感動し、トラブルにも立ち向かうからこそイタリア鉄道の旅は楽しいのだ。

※データは2007年10月当時のものです。

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匡克 池田
About 匡克 池田 (1145 Articles)
1967年東京生まれ。イタリア国立ジャーナリスト協会会員、フォトジャーナリスト。日本で出版社勤務後独立、1998年よりフィレンツェ在住。「シチリア美食の王国へ」「イタリアの老舗料理店」「フィレンツェ美食散歩」「伝説のトラットリア、ガルガのクチーナ・エスプレッサ」など著書多数。2011年に池田愛美と株式会社オフィス・ロトンダ設立。国際料理コンテスト「Girotonno2014」「Cous Cous Fest2014」で日本人初の審査員となる。 http://www.office-rotonda.jp https://www.facebook.com/ikedamasa
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