ローマ下町料理を紐解く その1 Coratella

コラテッラcoratellaとは、牛よりも小さな動物のコラータcorata(モツ)のことで、具体的には仔羊(agnello)、乳飲み仔羊(abbacchio)、仔ヤギ(capretto)の肺、心臓、レバー、場合によっては小腸も含む内臓類を指し、これらを炒め煮した料理をもコラテッラと呼ぶ。

新鮮な内臓を、白ワインビネガーを加えた水に15分ほど浸けてから汚れを洗い流し、適当に刻み、ラード(もしくはオリーブオイル)を熱したフライパンにまず肺、あれば小腸も一緒に加え、強火で数分炒める。さらに心臓も加えて数分炒め、塩、胡椒し、レバーを加えて炒める。数分後、仕上げにマルサラもしくはレモン汁をふりかける。

以上がLivio Jannattoniの『La Cucina Romana e del Lazio』で紹介されている基本的な作り方だが、マルサラを使うバージョンは手元にあるほかの資料では見かけない。多くはレモンを仕上げに用いる。また、内臓だけを使ったシンプルなコラテッラのほかに、カルチョーフィと合わせるバージョンもある。別のフライパンで薄切りにしたカルチョーフィをラード(もしくはオリーブオイル)でソテーし、歯ごたえがある状態にとどめておく。内臓は先述のように炒めていき、レバーを加える前にカルチョーフィを加え、あとは基本の作り方に従って仕上げる。

バリエーションとしては、先に玉ねぎと唐辛子をソフリットしたところへ内臓を加えていく方法や、内臓と一緒にブロードや白ワインを加える方法もある。また、コラテッラ・ブロデッタータと呼ばれる、卵も加えるバージョンもある。ラツィオでは卵(特に卵黄)とレモンを加えた煮込みをブロデッタートと呼ぶが、この作り方は昨今では流行らないらしい。内臓を炒めていく時に白ワインを少しずつ加え、レバーを加えた後に白ワインがあらかた飛んだら、溶きほぐした卵にレモン汁とマージョラムを混ぜたものを加え、火をとめて全体をよく混ぜてから蓋をして10分ほど置く。ローマ出身の美食研究家アダ・ボーニ(料理本『Il Talismano della Felicita’』(1929)や『La Cucina Romana』(1930)を著した)によれば、卵がぼろぼろとせず、しっかりと固まっていれば完成である。

いずれにしてもコラテッラは、煮すぎず、カルチョーフィが加わるときはその歯ごたえを残すようにし、熱いうちに供することが重要である。