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ローマ下町料理を紐解く その2 Coda alla vaccinara

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コーダは尻尾、ヴァッチナーラはヴァッチナーロ風、つまり肉屋風。日本語では一般的にオックステールの煮込みと訳している。『La Cucina Romana e del Lazio』の著者Livio Jannattoniによれば、コーダはクイント・クアルト(モツ)の“女王”であり、コーダ・アッラ・ヴァッチナーラはローマ料理の“帝王”である。そして、その難易度は高く、多くは「ゆでたテールのソース煮」に終わってしまうという。

作り方は、チョコレート(カカオ・アマーロ)を使うか否かで大きく二つの方法に分かれる。Anna Gosetti della Saldaの『Ricette Regionali Italiane』や、1930年に『La Cucina Romana』という料理書を出版した美食研究家のAda Boniは、チョコレートを使わないレシピを紹介している。さらにAda Boniは、家庭版とゴージャス版の二つのパターンを提案する。家庭版では、コーダをまずゆでて、そのブロードをとっておき、ゆでたコーダをにんにく、たまねぎ、イタリアンパセリ、黄にんじん、ラルドを刻んで混ぜ合わせたもの、生ハム1切れとともに鍋でソテーし、さらにラードを加え、トマトソース、ブロード、ゆでたセロリを加えて煮込み、塩・胡椒で調味する。ブロードはプリモに、セコンドとしてコーダ・アッラ・ヴァッチナーラを供するという日曜日の家庭料理的な考え方だ。

Ada Boniが提案するゴージャス版は、コーダだけでなく、ガッフィと呼ばれる牛ほほ肉も使う。コーダとガッフィを先述と同じ香味野菜とラルドを刻んで混ぜたものとともに鍋でソテーし、全体にこんがりと焼き色がついたら赤ワインを加え、水分がなくなったら、トマトソースを少々加え、水をかぶるくらいに注いでじっくり煮込む。別にセロリをゆでておき、仕上げに加える。できあがったコーダ・アッラ・ヴァッチナーラは濃い茶色で、ソースはとろりと重く、味はどっしりと濃い。このような状態になるまでだいたい6時間は煮込まねばならない。

一方、チョコレートを使う方法が本来だという説もある。トラディショナルなレストランなどでは、チョコレート、松の実、レーズンを使うところが多い。たとえば、テスタッチョの老舗Checchino dal 1887では、コーダをラルドとオリーブオイルでソテーし、刻んだたまねぎ、にんにく、クローブを加え、塩、胡椒で調味する。白ワインを加えて蓋をし、15分ほど煮込んだら皮をむいたトマトを加える。1時間後、コーダがかぶるくらいの湯を加えて蓋をしてさらに5~6時間煮込む。肉がすっかり柔らかくなり、骨から簡単にはずれるようになったら煮汁を別の鍋に取り、ゆでたセロリ、松の実、レーズン、細かく砕いたブラックチョコレートを加え、5分煮込む。食べる時にコーダとチョコレート入りのソースを合わせ、皿に盛りつける。チョコレートの風味はかなり強いが、コーダとの相性は意外と良い。

そのほか、最初のソテー時に唐辛子を加えるという方法もあり、これはコーダ・アッラ・ヴァッチナーラ発祥の地、肉屋が多くあったというRegola地区で用いられたという。また、このスーゴであえたパスタも、ティピカルなローマの味の一つ。使うパスタは存在感のあるリガトーニが常套である。

About Manami Ikeda (313 Articles)
大学卒業後、出版社に就職。女性誌編集に携わった後、98年に渡伊。以来ずっとフィレンツェ在住。取材とあらばどこにでも行きますが、できれば食と職人仕事に絞りたいというのが本音。趣味は猫と工場見学。
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