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年末に贈るパネットーネの“本来の意味”とは。

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今年もパネットーネの季節がやってきた。ジャーナリストのダヴィデ・パオリーニが先導する“一年中パネットーネ”(Panettone tutto l’anno)なるプロモーションのおかげで、この季節以外にもパネットーネを拝む機会は少しずつ増えてはいるが、それでもやはり、パネットーネは年末の風物詩である。スーパーにはパネットーネの山が築かれ、街のパン屋やパスティッチェリアでも店頭を飾るのはパネットーネだ。

さて、パネットーネ2015はどんな傾向にあるだろうか。年々多様化する傾向にあるが、今年もその流れは変わらないようである。アライーモ兄弟が営む三つ星レストラン「レ・カランドレ」が売り出しているPan(et)toneは、色見本のパントンにかけた、カラフルなシリーズ。バターではなくEVオリーブオイルを使い、天然色素で染めている。種類は、クラシックなフルーツ砂糖漬け、ヘーゼルナッツとオーツ麦とチョコレート、ピスタチオとチョコレート、アーモンドとレモンとジンジャーの4種。そのほかに、バターを使った伝統的な生地のパネットーネもあるが、スパイスを加えた変化球にしているところが、いかにもアライーモらしい。

先週末にはミラノでパネットーネ品評会が開催された。スポーツ新聞のLa Gazzetta dello Sportoが運営する食関連企画GazzaGolosaの主催で、今年で3回目、出品されたのは32という、かなり小規模ではある。出品者はすべて菓子職人で、大手メーカー製品は含まず。審査員は、レストラン「Ratanà」のシェフ、チェーザレ・バッティスティ、「Aimo e Nadia」のシェフ、アレッサンドロ・ネグリーニなどの料理人のほか、ジャーナリストや評論家たちで構成された。優勝したのは、バジリカータ州からやってきたヴィンチェンツォ・ティリ(「Tiri 1957」)で昨年に引き続いての快挙。2位はミラノ郊外のマウリツィオ・ボナノーミ(「Pasticceria Merlo」)、3位がサレルノ県のアルフォンソ・ペペ(「Pasticceria Pepe」)。イタリア菓子職人協会(Accademia Maestri Pasticcieri Italiani)の副会長であるパオロ・サッケッティ(「Nuovo Mondo」)は5位、ミラノの有名パスティッチエレのダヴィデ・コマスキ(「Pasticceria Martesana」)は7位、アマルフィ海岸のサルヴァトーレ・デ・リゾ率いるPasticceria De Risoは8位だった。

ほとんどがクラシックタイプだった入賞作品のなかでも変わり種で、しかも得票が高かったのは、アヴェッリーノ郊外のラッファエレ・ヴィノーラ(「Pasticceria Vignola」)作の“野菜炭製黒パネットーネ”。見た目の意外性に反して安定した美味しさが好評を得た理由。また、審査委員長を務めたジャン・マルク・ヴェッツォーリ(「Panificio Longoni」)が新作として発表したのは赤かぶの砂糖漬けを加え、表面に白胡椒をあしらった塩味のパネットーネ。これはもう、クリスマスの食事の後というよりは、食前のスプマンテのお供であろう。

変わりパネットーネはこれからもどんどん増えていくだろうが、このイベントの最後に、イタリア菓子界の総帥であるイジニオ・マッサーリがこう語った。「パネットーネには象徴的な素材が使われている。干しぶどうはお金を、オレンジは愛と豊穣、チェードロは不死を表す。パネットーネを贈るというのは、相手の幸福な人生を願って贈るということである」。原点のパネットーネの、ほんとうに美味しいものを見つけ出してプレゼントすることが、“正しい”暮れのご挨拶なのかもしれない。

About Manami Ikeda (325 Articles)
大学卒業後、出版社に就職。女性誌編集に携わった後、98年に渡伊。以来ずっとフィレンツェ在住。取材とあらばどこにでも行きますが、できれば食と職人仕事に絞りたいというのが本音。趣味は猫と工場見学。
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