サルデーニャの食を訪ねて04 伝統料理を味わう宿 Su Gologone

オリエーナにあるホテル・レストラン「Su Gologone ス・ゴロゴーネ」は、こんもりした林全体をホテルにしたような、自然と一体化した造りになっている。建築様式や家具、装飾、ファブリック、スタッフの衣装、そしてもちろん料理も地元の伝統にもとづいたものだ。メイン・レストランもあるが、エントランスから丘のような敷地を歩くこと数分、最上部にあるのが窯を中心にした素朴な郷土料理が食べられる炭火焼オステリア「Il nido del pane イル・ニード・デル・パーネ」だ。ペコリーノ・サルドやリコッタ、サラミ、アーティチョークやカルド、ズッキーニなどの地元野菜といったシンプルで素朴な前菜ももちろんよいが、ここでは地元の民族衣装に身を包んだ地元のご婦人二人組が、阿吽の呼吸とも呼べる伝統の技を見せてくれる。

2人が窯で焼くのは、まずパーネ・カラサウ。伝統通り10mもある布巾パンノスに包んで用意した生地を一人が焼き、わずか10秒ほどで焼き上がるともう一人が球状に焼けた生地を2枚に裂き、奇麗に広げる。そして今度はその裂いた生地を再び窯でぱりぱりに焼く、伝統的な「パーネ・カラサウ」の作り方だ。通常口にするのは保存食としての冷たい「パーネ・カラサウ」あるいはそれを調理した「パーネ・フラッタウ」だが目の前で焼きあがったばかりの「パーネ・カラサウ」を味わう機会はそうない。焼き立ての「パーネ・カラサウ」をまずはそのまま、そしてオイルをかけ「パーネ・グッティアウ」として、あるいはリコッタやサラミ、ペコリーノなどサルデーニャの食材とともに香ばしい香りを味わい尽くす。

ご婦人方、今度は「パーネ・カラサウ」でなく、薄く伸ばしたピッツァ状の生地に具を乗せて焼き始めた。これはサルデーニャのピッツァともピアディーナとも呼ばれる「Spianata スピアナータ」だという。まずはリコッタをつめてこぼれないように周囲を星形に手で成形し、窯に入れて焼き上げる。羊のリコッタ独特のフレッシュな酸味は、モッツァレッラとはひと味違うサルデーニャならではの羊飼いの味を生み出す。

次々に焼き上がるのはジャガイモとサルシッチャのスピアナータ、キノコのオイル漬のスピアナータ、そして極めつけはラルドのスピアナータだ。ラルドといっても肉が多くてパンチェッタに近く、ローズマリーを散らしてから焼き上げると、溶けた豚の脂とローズマリーの香りがたまらない。

本物のサルデーニャ家庭料理を味わうには海辺でなく、深い内陸まで足を伸ばさないと難しいが、「ス・ゴロゴーネ」ならばそんな感覚を味わうことが出来る。この日やシンプルな前菜とパーネ・カラサウ、スピアナータで終了だったがこの窯を使って山羊や羊などのグリル肉料理、あるいはサルデーニャ名物の子豚の丸焼きポルチェッドゥをすることもあるというからレストランで出会う奇麗なサルデーニャ料理でなく、ディープ・サルデーニャ料理を求めるなら求道者は是非。

http://www.sugologone.it