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ローマの1つ星、能田耕太郎シェフのグルメ・ピッツァ

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去る2017年1月30日、フィレンツェの「ピッツェリア・ビストロ・ジョット Pizzeria Bistrot Giotto」にて能田耕太郎シェフとピッツァイウオーロ、マルコ・マンツィのコラボレーション・ディナーが行われた。能田シェフはローマの「ビストロ64」のシェフとして2017年度ミシュランで1つ星を獲得。ヴィテルボ時代とあわせて二度自力でミシュランの星を獲得するという、日本人史上前例のない快挙を成し遂げた最注目の料理人である。2015年にインタビューした記事は「Bistrot 64@ROMA、能田耕太郎の挑戦」にまとめてあるのでご興味ある方はこちらもあわせてお読みいただきたい。

イスキア島出身、若干26才のピッツァイウオーロ、マルコがピッツァを焼き、かつて共に働いた能田シェフがトッピングと構成を考える「グルメ・ピッツァ・テイスティング」。近年イタリアでは反ナポリ・ピッツァ的ムーブメントともいうべきグルメ・ピッツァが流行である。つねづね「グルメ・ピッツァ」に変わるよいネーミングはないものかと思ってはいるのだが、ひとことで言い表す言葉がまだイタリアにも存在しないのが現状。ヴェローナ近郊、シモーネ・パドゥアンの「イ・ティッリ I Tigli」、レナート・ボスコの「サポレ Saporè」、カゼルタ近郊フランコ・ペペの「ペペ・イン・グラーノ Pepe in Grano」はその代表格。生地は天然酵母を使った長時間発酵であくまで軽くてヘルシー。古代小麦など複数の粉を組み合わせて生地に個性を与え、トッピングは非加熱、そしてプレゼンテーションはリストランテというのが新世代ピッツァの傾向である。中でもパドゥアンとペペは2017年度版ミシュランで史上初めてピッツェリアでミシュランの星を獲得するのではないかといわれていたが実現しなかった。そういったバックグラウンドもあり、2017年は新世代ピッツァの進化にいっそう注目が集まっている。(注・イタリアのリストランテ・ピッツェリアが星を獲得したことは歴史上あるが、それはピッツァでなく料理が評価された)

そのような流れもあり、能田シェフが他流試合ともいうべく、アウェーでのぞんだピッツァのデグスタツィオーネには注目が集まり小さなピッツェリアは満席。クラフトビールとの組み合わせで始まったデグスタツィオーネはこのような内容だった。

Margherita in Cocktail
Focaccia di acciuga e mozzarella di bufala campana
Pizza con pomodorini secchi e arancia candita, fiordilatte campano, gambero e basilico
Focaccia con impasto allo zafferano Purissimo delle Colline Fiorentine, con vitello tonnato
Pizza con impasto allo curcuma, con provola di bufala campana, cavolo nero e salame di cinta senese
Per la Tradizione Toscana, Pizza fritta con lampredotto
Pizzadessert;Cannolo caramellato con ripieno di bufala campana, pere e Mostarda Mantovana alle Pere

メニューにはピッツァの故郷であるカンパーニア州と、今回の舞台であるトスカーナ州の伝統的食材へのリスペクトが随所にあらわれていた。「マルゲリータ・カクテル」はピッツァ・マルゲリータの構成要素であるピッツァ、トマト、バジリコ、モッツァレッラを分解して再構成した、ユーモアが効いた軽いジャブ。続く「アンチョビとモッツァレッラ・ディ・ブーファラ・カンパーナのフォカッチャ」はタイプ0を36時間発酵させたもの。モッツァレッラとアンチョビというカンパーニア州の代表的食材をあわせたフォカッチャは軽くて歯切れよく、ピッツェリアでモッツァレッラとフォカッチャつまみつつピッツァが焼き上がるのを待つようなイメージ。「ポモドリーニ・セッキ、アランチャ・カンディータ、フィオル・ディ・ラッテ、エビ、バジリコのピッツァ」はエビとオレンジというシチリア的組み合わせ。イメージするなら港町マザーラ・デル・ヴァッロのピッツェリアか。次は地元フィレンツェ近郊のサフランを使った「サフランのフォカッチャとヴィテッロ・トンナート」ヴィテッロトンナートは本来蒸し暑い夏に食べるピエモンテの冷菜だが、フォカッチャと組み合わせても冷&温のコントラストで相性がいい。「ターメリックのピッツァ、プローヴォラ、カーヴォロ・ネロ、チンタ・セネーゼのサラミ」はトスカーナ&カンパーニアの合作。カーヴォロ・ネロをかりかりに炒めるのはよくエリオが作ってくれた「ガルガ」の定番パスタだったが、ピッツァのトッピングとしてもあう。そしてラストをしめるのはなんと「ランプレドットのピッツァ・フリッタ」。ストリートフード好きならその姿を見て思わず顏がほころぶ。フィレンツェとナポリ、両都市の屋台が手を結んだような味の出会いは今夜のベスト。そしてデザートはシチリアへのオマージュ「カンノーロ」で、詰め物には水牛のクリームと洋梨、そして洋梨のモスタルダ。甘くて辛いコントラストで締めくくるエンディングだった。

ちなみにこの日のデグスタツィオーネにはそれぞれ採点項目があり、参加者全員がベスト3を投票。ベスト1に輝いたピッツアは今後もオンメニューする予定だという。わたしの採点は1、ランプレドット 2、カーヴォロ・ネロというトスカーナ・タッチのピッツァが1、2位。3位がエビとオレンジのピッツァで、テーブルに置かれた他の参加者の採点をちらりとのぞいてみたところ女性票はエビに集中していたようだ。採点結果は「Pizzeria Bistrot Giotto」のFBページで近々公表されるようなのでご興味ある方はそちらもどうぞ。

 

Masakatsu Ikeda
About Masakatsu Ikeda (1143 Articles)
1967年東京生まれ。イタリア国立ジャーナリスト協会会員、フォトジャーナリスト。日本で出版社勤務後独立、1998年よりフィレンツェ在住。「シチリア美食の王国へ」「イタリアの老舗料理店」「フィレンツェ美食散歩」「伝説のトラットリア、ガルガのクチーナ・エスプレッサ」など著書多数。2011年に池田愛美と株式会社オフィス・ロトンダ設立。国際料理コンテスト「Girotonno2014」「Cous Cous Fest2014」で日本人初の審査員となる。 http://www.office-rotonda.jp https://www.facebook.com/ikedamasa
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