SAPORITA NEWS

マッシモ・ボットゥーラの料理1 Verde su marrone su nero

有料コンテンツのお申し込みはこちらから
イタリア料理のストックフォト10,000点超

マッシモ・ボットゥーラの料理の世界に大きな影響を与えた人物を5人あげるとするとこんな顔ぶれになるだろう。まずはボットゥーラが若い頃師事したピアチェンツァの「Antica Osteria del Teatro」のシェフだったフランス人ジョルジェ・コーニー、Louis XVのアラン・デュカス、El Bulliのフェラン・アドリアという3人の偉大な料理人。これはつねづねボトゥーラも公言している事実である。そして残り2人は、NYで知り合いその後のボットゥーラの人生のパートナーとなったララ・ジルモアとモデナの画商であるエミリオ・マッツォーリだ。この2人がボットゥーラと現代アートを結びつけ、現在われわれが知るアーティスティック、というと陳腐に聞こえるが、現代美術的なボットゥーラの料理の世界に多大な影響を与えたのである。

「Verde su marrone su nero(黒の上の茶の上の緑)」もそうした傾向が極めて強い料理である。遠近法を多用して風景に奥行きをもたせるのに成功したのがダ・ヴィンチに代表されるルネサンス絵画であるならば、ボットゥーラが描くのはそうしたニュアンス(=スフマトゥーラ)を排除し、あくまで輪郭が切り取るミニマリズムを追求した原色の世界、サイケデリックである。「サイケデリック・ステーキ」とわたしは呼ぶ名作「Beautiful, psychedelic, spin painted veal, not flame grilled」はその極致。5色のソースを皿に描き続ける様子はまさにキャンバスに向うアーティストであり、ジャャクソン・ポロックのアクション・ペインティングそのものである。「サイケデリック」同様「迷彩」というキーワードもボットゥーラの料理には頻発するが、この「Verde su marrone su nero」と「Camouflage」はその代表例である。ボットゥーラの父は米の一大生産地マントヴァ近郊Mirandolaに生まれたことから、ボットゥーラは少年時代から米料理を食べて育ったことは想像に難くなく、Osteria Francescanaのメニューにはつねに米料理があるのもそのためであろう。牡蛎のエッセンスを抽出して作った「Riso grigio e nero」はボットゥーラの代表的米料理だが、この「Verde su marrone su nero」もやがてはそうした代表的米料理となるはずである。緑はさまざまな野菜の葉緑素、茶はポルチーニ、黒は植物の炭から抽出しており、3と5という数字はボットゥーラの料理の世界を理解する際重要な数字である。おそらく最も有名な料理である「5種類の熟成、温度、テクスチャーの異なるパルミジャーノ・レッジャーノ Cinque stagionature di Parmigiano Reggiano in diverse consistenze e temperature」も発表当初は3種類だったことをする人は少ない。また、その料理名からわかるようにマーク・ロスコの作品「Blu, verde e marrone(英語タイトルBlue, green and brown)」にインスピレーションを得ているとも思われる。

匡克 池田
About 匡克 池田 (1159 Articles)
1967年東京生まれ。イタリア国立ジャーナリスト協会会員、フォトジャーナリスト。日本で出版社勤務後独立、1998年よりフィレンツェ在住。「シチリア美食の王国へ」「イタリアの老舗料理店」「フィレンツェ美食散歩」「伝説のトラットリア、ガルガのクチーナ・エスプレッサ」など著書多数。2011年に池田愛美と株式会社オフィス・ロトンダ設立。国際料理コンテスト「Girotonno2014」「Cous Cous Fest2014」で日本人初の審査員となる。 http://www.office-rotonda.jp https://www.facebook.com/ikedamasa
error: