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イタリアのカクテルカルチャーは育つか。

Florence Cocktail Week 2nd edition

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90年代以降急速に広がったハッピーアワーもしくはアペリティーヴォの習慣。バールや、ロカーレと呼ばれるカフェバー(昔懐かしい響き)的な店で、夕方にワンドリンクを頼むともれなくおつまみや軽食ビュッフェがついてくるというサービスで、ワンドリンクはワインよりもどちらかというとビールやカクテルが好まれる。特にプロセッコとビッテル(アペロールを使うことが多い)と炭酸水とを混ぜたスプリッツSpritzというヴェネト発祥のロングドリンクが、“アペリティーヴォの顔”的な人気を博して全国的に流行したのが定着の要因の一つと思われる。ちなみに、かつてはこのタイムサービス(18時〜21時頃)をハッピーアワーと呼ぶことが多かったが、そもそも「食前酒」という意味であるアペリティーヴォと呼ぶ店が増えており、さらには、サービスのつまみや軽食をアペリティーヴォと呼ぶ人まで出てきている。

このアペリティーヴォブームが昨今のカクテル人気を押し上げている。ワインの国イタリアでは、アルコールといえばワインだったがそれも今は昔、クラフトビールとカクテルが特に若い世代に人気である。しかし、クラフトビールのメーカーが濫立して「これは果たして美味しい?」と首を傾げるようなものもあるのと同じく、カクテルも出来不出来が激しい。それでも、ビールはある程度まとまった量を作るために投資も必要なので、ルールを無視しためちゃくちゃな造りをすることはあまりないが、カクテルはバーデンター個人のスキルや経験、ファンタジーに依るため、時にとんでもない代物に出くわす危険がある。もちろん、美味しいカクテルに出会う可能性もあるが、カクテル文化黎明期にあるイタリアでは、残念な一杯に遭遇する確率は高い。

それでもカクテル人気は順調に上昇中であり、ならばもっと盛り上げてカクテル文化をレベルアップしようということで5月1日〜7日、「フローレンス・カクテル・ウィーク」が開催された。主催者は、中央市場2階でランプレドットパニーノ店を営むロレンツォ・ニグロとジャーナリストでフードイベントの仕掛け人パオラ・メンカレッリ。彼らの目的は若い世代にバーテンダーの仕事に興味を持ってもらうことと、酔っ払うために飲むのではなく、スマートにアルコールを楽しむ意識を高めることだ。このイベントには、フィレンツェの主だったロカーレやバーレストラン16店とそれぞれのバーテンダーが参加し、期間中は各バーテンダーが考案したオリジナルのシグネチャーカクテルと特別価格のカクテルリストがそれぞれの店で提供され、そのほかにスポットプログラムとしてマスタークラスやワークショップ、試飲会などが毎日繰り広げられた。メインイベントは件の16名のバーテンダーによるコンテストである。

主催者のパオラ・メンカレッリによると、今年で2回目となるこのイベントは、前回よりも認知度が上がっていることから人選により慎重を期したという。キワモノ的なオリジナルカクテルを認めてしまえば、イベント自体の目標から外れてしまうからだ。そして、コンテストには今のフィレンツェのトップを行くバーテンダーだけでなく、次世代を育てるために若手部門も設けた。さらにはイギリスと日本からも名人と呼ばれるバーテンダーを招聘。銀座のバー「High Five」オーナーで、日本バーテンダー協会副会長であり、世界ベスト50のバーテンダーとして日本人で唯一ランクインしている上野秀嗣氏は、フォーシーズンズ・ホテル・フィレンツェでのマスタークラスとスペシャルナイトで日本の洗練されたカクテルカルチャーを披露し、コンテストの審査員も務めた。これまでにも海外の国際大会に若手を送り込んだり、国際会議にも出席するなど世界のカクテル事情に精通する上野氏に審査後の感想を求めると、「イタリアのカクテルは総じて楽しげな世界。作っているところを見ると、アルコールがきついかなと思うのに、飲むと意外とマイルドなのが特徴。また、フードペアリングを重視するのもイタリアらしい」という。食べ物とのマッチングを大切にするのは、ワイン文化が背景にあるのかもしれないが、日本のバーでエレガントなカクテルを静かに味わうというスタイルとはまた別のイタリア式カクテル文化が、さて、どんな発展をしていくのか、今後に注目である。

 

Florence Cocktail Week2017参加店

 

Atrium Bar – Four Seasons Hotel

Bitter Bar

Ditta Artigianale Oltrarno

Gilli 1733

Gurdulù

Harry’s Bar

La Ménagère

Le Pool Bar – Villa Cora

Locale

MAD – Souls & Spirits

O’ Cafè – Golden View Open Bar

Rasputin

Tabarin

The Fusion Bar – Gallery Hotel Art

Vicktoria Lounge Bar

Winter Garden Bar – The St. Regis Florence

 

About Manami Ikeda (314 Articles)
大学卒業後、出版社に就職。女性誌編集に携わった後、98年に渡伊。以来ずっとフィレンツェ在住。取材とあらばどこにでも行きますが、できれば食と職人仕事に絞りたいというのが本音。趣味は猫と工場見学。
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