SAPORITA NEWS

ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナの伝説(無料公開)

有料コンテンツのお申し込みはこちらから
イタリア料理のストックフォト10,000点超

「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ」あるいは単に「フィオレンティーナ」と呼ぶこともあるが、これはサッカーチームのことではなく、牛のTボーン・ステーキのことである。「ビステッカ」の名の由来については諸説ふんぷんだが英語の「ビーフステーク」から来たとされている。曰く、メディチ家の時代から8月10日のサン・ロレンツォの祭りでは牛肉を焼いて市民に無償でふるまった習慣があり、ある時それを食べたイギリスの騎士が思わず「これはビーフステークだ!」と叫んだことからイタリア風に「ビステッカ」と呼ばれるようになったとか、あるいは19世紀末にフィレンツェを包囲した英国軍が、当時すでに名物としてしられていたフィレンツェ風ステーキ「フィオレンティーナ」をそう呼んだことに始まる、とか諸説ふんぷん。

とにかく現在では「ビステッカ」はイタリア語となり、ごく一般的に使われている。正統はTボーンを中心にフィレとサーロインが美しい二等辺三角形を作り、19世紀の料理研究家アルトゥージによれば「厚さは指二本分」すなわちツーフィンガー、4〜5センチで重さは骨付きで1〜1.5キロ。これを炭か薪で焼くが、焼き加減は「アル・サングエ」つまり文字通り血の滴るようなレアが正統とされる。

と書くと一見簡単そうに見えるが、重要なのは肉の熟成具合で、仕入れてから食べごろになるまで各店でフロッラーレ、つまり熟成させる。いわば寿司屋のマグロに似た勘どころが要求されるのだ。平均価格はキロあたり末端価格で30〜40ユーロ程度。つまり1キロ程度で6000円程度が相場である。

イタリアでもブランド・ビーフがもてはやされる傾向にあるが、中でもビステッカに最適とされるのはキアナ牛「キアニーナ」といわれる真っ白い白牛。とはいえ価格もそれなりに反映され、キアニーナがもてはやされるのはいかがなものか、という専門家も多い。ビステッカが美味しい店というのはおしなべて回転が早いので、店頭には大量の牛肉が飾られていることが多い。ちなみに毎年6月に行なわれる古式サッカー、カルチョ・ストリコでは試合ごとに勝者にはこのキアニーナが贈られる。

 

匡克 池田
About 匡克 池田 (1161 Articles)
1967年東京生まれ。イタリア国立ジャーナリスト協会会員、フォトジャーナリスト。日本で出版社勤務後独立、1998年よりフィレンツェ在住。「シチリア美食の王国へ」「イタリアの老舗料理店」「フィレンツェ美食散歩」「伝説のトラットリア、ガルガのクチーナ・エスプレッサ」など著書多数。2011年に池田愛美と株式会社オフィス・ロトンダ設立。国際料理コンテスト「Girotonno2014」「Cous Cous Fest2014」で日本人初の審査員となる。 http://www.office-rotonda.jp https://www.facebook.com/ikedamasa
error: