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トレヴィーゾから世界へ。イタリアのカフェ文化を伝えるゴッピオン・カフェ

La cultura del caffè italiano lanciata da Goppion Caffè

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イタリア人の97%が飲むというカフェ。量としては北欧の人々には叶わない(1位のフィンランドが一人当たり年間約10kgなのに対し、9位のイタリアは約5.6kg)けれど、イタリア人にとってカフェは間違いなく国民的飲み物である。このカフェの原材料であるコーヒー豆は、イタリア全土に存在する700軒余りの焙煎及び販売業者(torrefazioni)を通じて流通している。大部分は小規模経営ゆえ、ごく限られた地域でのみ販売される。それだけに、カフェは地域性が如実に表れる食品でもある。一方で、数は少ないが、比較的広範な販売網を持ち、さらには輸出もしている企業も存在する。ヴェネト州トレヴィーゾの郊外、プレガンツィオルに本社がある「ゴッピオン・カフェ」もそんなコーヒー豆焙煎企業の一つだ。

孤児であったルイジ・ゴッピオンは、トレヴィーゾ郊外の小さな町に若くしてバール・トラットリアを開いた。食料品店も兼ねていた店では暖炉の火を使った直火焙煎のコーヒー豆も販売した。ルイジの店は、息子のピエトロ、やがてピエトロの6人の子供も働く、町の中心的な商店となったが、第二次世界大戦が勃発、6人兄弟のうちアンジェロとジョヴァンニの二人は、新天地を求めてエチオピアへと旅立った。終戦後に戻ってきた二人は、1948年にトレヴィーゾにあった小さな焙煎店を購入し、「ゴッピオン兄弟社」の看板を掲げた。これがゴッピオン・カフェの始まりである。

1968年、ゴッピオン兄弟社は場所を移し、より大きな規模の焙煎工場を現在地に建設。イタリアでコーヒー豆の真空パックの製造ラインを持つ初めての工場としてスタートした。現在、創業者ルイジから数えて5代目となるが、家族経営であることに変わりはない。製造量の85%が国内向けだが、近年急速に輸出は伸びており、輸出先は、ヨーロッパ各国のほか、中東、アジアにも広がっている。

ゴッピオン・カフェの海外での拡大は、イタリアのエスプレッソ文化の外国での浸透に大きく関わっている。コーヒー豆の出自を栽培畑からリサーチし、フェアトレードに参加し、原産国の品質管理と持続可能な生産をサポートする努力を続ける傍、イタリア国内では先進的なコーヒー豆焙煎企業10社が加盟するCSC(Caffè Speciali Certificatiスペシャル・コーヒー認定)に名を連ね、さらには、イタリア・エスプレッソ保護組合創設の一社として、イタリアのエスプレッソのユネスコ無形文化遺産登録を目指し、活動している。つまり、品質の追求と国外へのエスプレッソ文化の伝播活動を同時進行で行なっているのである。

コーヒー豆の質は、生産地の畑ごとに異なる。ゴッピオン・カフェは、畑ごとに豆を選別し、その豆に合わせて、焙煎の温度を変えている。そして、異なる性質を持つ豆を組み合わせることで、アロマ、ボディ、酸味のバランスを図り、オリジナルのブレンドを製造している。主な銘柄は4つで、フェアトレードの有機栽培の豆を使った「ナティーヴォ」、ブルーマウンテンとして知られる中南米産の高品質豆100%の「Ja.BI.Mo.」、CSC認定のアラビカ種とロブスト種をブレンドした「エスプレッソ・イタリアーノCSC」、そして、創業以来の伝統のブレンド「ドルチェ」である。そのほか、限定生産品としてパッケージは新進のアーティストがデザインするスペシャルブレンドシリーズや、毎年秋にトスカーナのキャンティで開催されるヴィンテージ自転車レース「エロイカ」のオフィシャル・カフェを提供し、レースをモチーフとしたオリジナルパッケージも手がけている。

ところで、イタリア人はバールでエスプレッソを飲むだけでなく、家庭でもガス火にかけて沸かすコーヒーを飲む。その豆は同じ豆でいいのだろうか?この質問に対し、ゴッピオン・カフェのマーケティングを担当するパオラ・ゴッピオンは「基本的に同じです。ただ抽出方法が異なるので全く同じにはなりません。例えば、マシーンで高圧をかけて抽出するとエスプレッソ特有のクレーマ(ごく細かい泡。見た目にはクリーム状)が表面にでき、それがまたエスプレッソの品質を語る重要なエレメントとなりますが、アロマ、ボディ、酸味は変わりません」という。また、カフェの重要な材料である水も、例えばイタリアの硬水と日本の軟水では味に違いが出るのではないかと尋ねると、確かに水道水では違いが出てくるが、本当に美味しいカフェを作るには柔らかい水が適しており、実際、ゴッピオン・カフェ社内の試飲バールや、直営のカフェテリアでは水の硬度を下げる浄水器を使用しているという。ナポリなど南イタリアで好まれる深煎りのパンチの効いたカフェに比べると、繊細で複雑味のあるゴッピオンのカフェには、水も柔らかいものが適しているのかもしれない。

世界的にコーヒーがブームである今、ゴッピオン・カフェではエスプレッソへの関心を持つ人のためのコーヒースクールも開催している。プロのバリスタですら、現場でのたたき上げで経験に頼るだけで正しい知識を持たないケースが多い。そういった“現職”に向けたスキルアップのコースのほか、一般のコーヒー愛好家に向けたコースもある。スクールはまだ始まったばかりだが、イタリアのコーヒー文化を知る絶好の機会である。

 

Goppion Caffè

www.goppioncaffe.it

About Manami Ikeda (325 Articles)
大学卒業後、出版社に就職。女性誌編集に携わった後、98年に渡伊。以来ずっとフィレンツェ在住。取材とあらばどこにでも行きますが、できれば食と職人仕事に絞りたいというのが本音。趣味は猫と工場見学。
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