説明
イタリアのパンは、残念ながら美味しいものに出会える確率は高くありません。ケミカルなlievito(イースト)を多用し、早く醱酵させて効率良く作ることを良しとする傾向があるからです。しかし、自家製の酵母を使い、ゆっくりと醱酵させて薪で焼いたパンもあります。ぱりっとした厚めのクロスタ(皮)、気泡がたっぷり入った弾力性のあるモッリーカ(内側)、こうばしい小麦の香り。これが本来のイタリアのパンです。
「Pane senza impasto」の著者Jim Laheyは、イタリアでパンの美味しさに目覚めたパン職人。ニューヨークの美術学校の学生だった頃、彼女を喜ばせようとパンを作って以来その魅力にとりつかれ、学校のカリキュラムの一環で訪れたローマでイタリアのパンと出会い、理想のパンを求めるあまりに学校を辞めて(本当は放校になったらしい)、イタリアに何度も足を運ぶようになります。サン・ジミニャーノの葡萄農家で働く傍ら、その農家の薪窯を使いこなそうと奮闘し、ローマのカンポ・ディ・フィオリの老舗パン屋や、イタリアの3つのIGP(地域保護表示)パンの1つに認定されているジェンツァーノのパン屋で修業を重ねます。同時に、アピシウスの料理書に始まるイタリアのさまざまな古書文献を片端から研究。そうしてたどり着いたのは、pane senza impasto、練らないパンでした。
粉とイーストを混ぜ、そこに75%程度の水を加えた後は30秒ほど混ぜて12時間から18時間かけてゆっくり醱酵。折りたたむようにしてひとまとめにした生地を成形醱酵させた後、蓋付き鍋に入れ、オーブンで焼くのですが、途中で蓋をはずして水分を飛ばし、ぱりっとしたクロスタに仕上げます。表面は焦げているのかと思うくらいの暗褐色ですが、これがJimがイタリアで学んだ正しい焼き色だと言います。何にもまして弾力性と香りが素晴らしく、さらに、この“正しいイタリアのパン”が家庭のオーブンでもできるというところが凄い。サブタイトルの「シンプルで革新的なメソッド」は単なる宣伝文句ではありません。
今はニューヨークで2軒のパン屋を営み、多くのレストランに卸してもいるJimの「Pane senza impasto」は彼のこれまでの半生と、パンのメソッド、応用としてのさまざまなパンとフォカッチャ、パニーノのレシピをまとめた一冊。2009年にアメリカで出版された英語版のイタリア語版です。
目次
1どのようにしてパン職人は生まれたのか(Jimの半生ストーリー)
2練らずに鍋に入れて焼くLaheyメソッド
3家庭でできるスペシャルなパン(さまざまな粉や、形、水の代わりにビールや果物の絞り汁を使ったものなど20種)
4ピッツァとフォカッチャ(ベースとなる生地、合わせる具のバリエーションなど12種)
5パニーノ・アート(具材も手作りするパニーノ26種)
6堅くなったパンで(パンツァネッラやリボッリータなど9種)
版型:260×210(mm) 960g オールカラー224P ハードカバー イタリア語 Guido Tommasi Editore刊