追悼グアルティエロ・マルケージ
2017年12月26日、ヌオヴァ・クチーナ・イタリアーナの創設者であり現代イタリア料理の父、グアルティエロ・マルケージが87才で亡くなったことはまだ記憶に新しい。1985年ミラノの「ボンヴェジン・デ・ラ・リーヴァ」でイタリア史上初めて3つ星を獲得したばかりか、移転したフランチャコルタの「アルベレータ・グアルティエロ・マルケージ」でも再度3つ星を獲得、これはいまだに破られていないイタリア記録である。もちろんミシュランの評価が全てではないが、イタリア料理史に残した業績はあまりにも偉大である。 マルケージの元で学んだカルロ・クラッコ、アンドレア・ベルトン、エンリコ・クリッパ、パオロ・ロプリオーレといったマルケージ・チルドレン、いわゆるマルケジーニたちはいまやみなイタリアを代表するトップシェフである。 マルケージは晩年、リタイアした料理人たちのための終の住処を作ることにエネルギーを注いでおり、道半ばにして本人は他界したもののその遺志はマルケージ財団はじめ多くのスタッフが引き継いでいる。 晩年のマルケージが取り組んでいたもうひとつの重要な仕事が自ら出演し、その生涯をたどる自伝的映画「グアルティエロ・マルケージ 偉大なイタリア人 Gualtiero Marchesi The Great Italian」だった。 先日フィレンツェで開催された食の見本市TASTE会場内で行われたのはその映画を巡るトークイベント。 司会兼オーガナイザーはフード・ジャーナリスト、ダヴィデ・パオリーニ。パネラーにはマルケージと昔から親交があったエノテカ・ピンキオーリのエグゼクティヴ・シェフ、アニー・フィオルデ、マルケージ財団のサーラ・ヴィターリ、ストロッツィ宮殿美術館のルドヴィカ・セブレゴンディの計4人。アニー・フィオルデからは昔のマルケージの思い出や映画の収録で昨年マルケージがエノテカ・ピンキオーリを訪れた思い出などが語られ、ルドヴィカ・セブレゴンディからは同じく映画の撮影でストロッツィ宮殿を訪れたマルケージのエピソードが語られた。 もっとも興味深かったのは、やはりマルケージのそばで長年仕事してきたサーラ・ヴィターリの話。マルケージの過去の名作で一世を風靡し、構成の料理人たちに影響を与えた数々の料理が現代アートにインスピレーションを得ていたことだった。ソースを投げつけるように描く「ドリッピング」はジャクソン・ポロックのアクション・ペインティングから着想を得、ロッソ・エ・ネロはルチオ・フォンターナの作品にインスピレーションを得た。そしてかの有名な「黄金のリゾット」はカンディンスキーに影響されていたというエピソードを語ってくれた。注目の映画公開はイタリアが4月、その後ヨーロッパ、北米と巡回し、秋から年末にかけてがアジア。日本では11月の「世界イタリア料理週間」にかけて上映される可能性が濃厚。イタリア料理愛好家は要注目。SAPORITAをもっと見る
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