16人のシェフたちによるチャリティ・ナイト@FIRENZE

2018年9月6日(木)20:00、フィレンツェ旧市街を見下ろす高台にあるベルヴェデーレ要塞、Forte Belvedereに男性8人、女性8人、合計16人のフィレンツェを代表するシェフたちが集結した。これは有志団体 Artemisia Centro Antiviolenza がDV被害に悩む女性や子供たちのための住所非公開シェルター運営基金を募るためのチャリティイベント “Italian Chef Charity Night 2018” で今回で3回目になる。システムとしては入場時に1人6枚のチケットが渡され、12名のシェフたちが用意したフィンガーフードや本格的な料理12種類から6皿が選べ、一応募金額として1人25ユーロ(それ以上は任意)が設定されている。全シェフの料理が食べたい!!という人には追加チケット(有料)の用意もあり、コーヒー、ジェラート、ワイン、水、パンは無料。今回集結したシェフたちは以下の通り。中にはSAPORITAになんども登場したシェフもいるのでフィレンツェのレストラン事情に詳しい人たちにとってはおなじみのメンバーかもしれない。

女性シェフ8名
アニー・フェオルデ&リッカルド・モンコ Annie Feolde&Riccardo Monco@Enoteca Pinchiorri
ベアトリーチェ・セゴーニ Beatrice Segoni@Konnubio
カリメ・ロペス Karime Lorez@Osteria Gucci
ナディア・ミュラー Nadia Moller@MOMIO
モニカ・フィリッピンスカ Monika Filipinska@Dievol
エリーザ・マソーニ Elisa Masoni@La Querca di Castelletti
オンブレッタ・ジョヴァンニーニ Ombretta Giovannini@Leggenda dei Frati
ミケーラ・ボッタッソ Michela Bottasso@Biagio Pignatta
男性シェフ8名
マルコ・スタービレ Marco Stabile@Ora D'Aria
ピーター・ブリューネル Peter Bruner@Borgo San Jacopo
シモーネ・チプリアーニSimone Cipriani@Essenziale
アンドレア・ビアンキーニAndrea Bianchini@La Bottega del Cioccolato
リッカルド・セルニ Riccardo Serni@Trattoria Moderna
ステファノ・カヴァッリーニ Stafano Cavallini@TOSCA
ルイジ・ボナドンナ Luigi Bonadonna@Chalet Fontana
サンドロ・バルディーニ Sandro Baldini@Relais Le Jardin
無償提供
Champagne Bergere(ワイン)
Galateria Pasticceria Badiani(ジェラート)
Gelateria Gipponi(ジェラート)
Caffe Corsini(カフェ)
Vallepicciola(ワイン)
Nu Ovo(フィンガーフード)
Luigi Vilashi(スキャッチャータ)

 

この夜口にした料理とシェフ名は以下の通り。

レバーのムース・フランボワーズのジュレ
Mousse di fagato grasso leggermente affumicata e gelatina di lamponi by Annie Feolde@Enoteca Pinchiorri

エミリア・バーガー
Emilia Burger by Karime Lorez@Osteria GUCCI

サーモンのセビッチェ・コリアンダーと大根
Ceviche di salmone con coriandro, daikon e ravanello by Peter Brunel@Borgo San Jacopo

サマートリュフのリゾット・舌平目のカルパッチョとポロネギのフリット
Riso al tartufo nero estivo, carpaccio di sogliola e porri fritti by Stafano Cavallini@TOSCA

レタスのタコス・黒いラグー
Taco di lattuga con ragù al nero by Simone Cipriani@Essenziale

キアナ牛のサーロイン・フムスとDievoleのEVO
Controfiletto di Chianina, hummus di legumi e acetosella, maionese all’Evo di Dievole ed erbe spontanee by Monika Filipinska@Dievol

トマトウォーターのポーチド・エッグ
Uovo al pomodoro e tarese by Marco Stabile@Ora D’Aria

見立てカプレーゼ・ポモドリーニのコンフィ、オリーブ・パンのクロスティーニ
Finta caprese con pomodorini confit e crostini di pane alle olive by Beatrice Segoni@Konnubio

鶏レバーのビニエ・ヴィンサント、セージ、パイナップルとタマネギのジュレ
Bigné di fegatini con una gelé al vinsanto, salvia, ananas e cipolla in agro by Elisa Masoni@La Querca di Castelletti

まずはそれぞれの料理の完成度の高さに驚愕。野外なので風も吹くし照明も不完全、火口も水場も最低限でありながら、決して大鍋でソースを煮込んでパスタを茹で続ける、あるいはクロスティーニとサラミを配るというような提供調理の方法ではなく、それぞれがシグネチャーディッシュ、あるいは新作をフィンガーフードやブッフェ形式にして提供するという、悪条件下での仕事ぶりを見ているだけでも参考になるオーガナイズぶりだった。例えばカリメ・ロペスはあのエミリア・バーガーを、オステリア・グッチで提供するピンク色のパッケージそのまま出していたし、マルコ・スタービレは著書の中でも頻繁に登場する注目食材「卵」をハイレベルに展開していた。

それにしても思うのはチャリティのためとはいえ、こんなルネサンス時代のモニュメントを、しかも夜、飲食イベントに会場を提供してくれるフィレンツェ市の懐の深さだ。ベルヴェデーレ要塞は1590年から1595年にかけてメディチ家対抗フェルディナンド1世が、ジュラートでも知られる建築家ブオンタレンティに命じて造らせた要塞で、メディチ家の居城ピッティ宮殿を守る役割があった。16世紀末といえば日本は安土桃山時代だから、現存しないものの安土城や伏見城内で煮炊きをするのに許可を出すようなものだ。日本でアマトリチャーナデイというチャリティイベントを運営している身としては、常日頃日本の行政が「前例がない」という一言でイベント許可を出さないケースに日々直面しているだけにうらやましくもあり、嘆かわしくもあり。チャリティを心から楽しんでいるイタリア人を間近に見て、その温度差を感じずにはいられなかったことはいうまでもない。

 

 

 

Masakatsu IKEDA
About Masakatsu IKEDA 1176 Articles
池田匡克 Masakatsu IKEDA ジャーナリスト 1967 年東京生まれ。出版社勤務後1998 年イタリアに渡り独立。旅と料理のビジュアル・ノンフィクションを得意とし、イタリア語を駆使したインタビュー、取材、撮影、執筆、講演活動を日本、イタリア両国で行う。主な著書に「シチリア美食の王国へ」「イタリアの老舗料理店」「サルデーニャ!」「フィレンツェ美食散歩」「アマルフィとカプリ島」「Dolce!イタリアの郷土菓子」「世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ」など多数。2005年よりイタリア国立ジャーナリスト協会所属。株式会社オフィス・ロトンダ代表取締役。2014年国際料理大会Girotonno、Cous Cous Festに日本人として初の審査員に選ばれる。2016年レポーター・デル・グスト賞受賞。