シチリア美食の王国へ17 素朴なのに洗練、それがシチリアのお菓子
シチリアでもっとも有名なお菓子といえば、リコッタをたっぷり使ったカッサータとカンノーリ。でも、美味しいお菓子はシチリアのあちらこちらにある。圧倒的に伝統菓子が中心だが、なかにはパレルモの「パスティッチェリア・カッペッロ」のように、今風の繊細なチョコレートケーキをつくるところもある。しかし、この店でも、ピスタチオやアーモンドをたっぷり使ったビスコッティや伝統的なブチェッラーティ(パイのようにもろい生地のなかにドライフルーツやチョコレートを詰めて焼いたドーナツ型のケーキ)はやはり健在だ。 シチリアの伝統菓子はその多くが修道院に伝わるレシピに基づいている。そのなかでももっとも有名なのは、マルザパーネ(マジパン)菓子。本物そっくりの果物をかたどった甘い甘いアーモンドペーストのかたまりは、パレルモではマルトラーナ教会にそのレシピが伝えられていたことから、フルッティ・ディ・マルトラーナとも呼ばれている。しかし、このお菓子で有名なのはエリチェにある「マリア・グランマティコ」という店だ。クラウズーラ派修道院に伝わる秘蔵のレシピを、マリア・グランマティコという女性が修道院にいた15年間に身につけ、修道院を出た後に菓子屋を開いて今にいたる。彼女のお菓子と半生を一冊にまとめた「Bitter Almonds」という英語の本がある。これを、サン・ヴィート・ロ・カポのクスクスの女王マリールーは、「bitterというのは彼女の人生をも指すのよ。それにしてもあんないい本がイタリア語で出ないなんて悲しいこと」という。見つけたらぜひ手に入れておきたい本だ。 バロックで有名な街はお菓子でも有名である。モディカには“チョコレート博士”フランコ・ルータの「ドルチェリア・ボナユート」、ノートには“カンノーリNo.1”コラード・アッセンツァの「カフェ・シチリア」がある。私はこの二軒をバロックゾーンの二強と呼んでいる。この二強に迫る店が、カターニアの「ノンナ・ヴィンチェンツァ」とパラッツォーロ・アクレイデの「コルシーノ」だ。どちらも、アーモンド、ピスタチオ、松の実を使ったビスコッティ類が美味しいが、「ノンナ・ヴィンチェンツァ」はよりクラシックで重厚な味わい。店もサン・プラチド教会広場に面したパラッツォ・ビスカリの中にあってアンティークな雰囲気がなかなかいい。ここの、サンタ・アガタの祭りの頃につくるオリーブの実をかたどったアーモンドペーストのお菓子はことに美味しい。一方、「コルシーノ」は古くからある老舗だが、改装してすっきり近代的なバール・パスティッチェリアになっている。タルトやケーキ類もいいが、ここのおすすめは一つずつ包装されたビスコッティだ。日持ちするので日本まで持ち帰るのにぴったりである。さらにもう一つ、この「コルシーノ」で、甘い菓子ではないが、白眉ともいえるのがアランチーノ。紡錘形のきりっと揃った形、外側はかりっと香ばしく、中はふわりとまとまったリゾットでひき肉とゆで卵とグリンピースがたっぷり、シンプル揚げたてほくほくでとっても美味しい。私のなかでのアランチーノ・グランプリ堂々一位に輝いている。 ●Pasticceria Cappello(パスティッチェリア・カッペッロ) Via Colonna Rotta,68 Palermo Tel091-489601 水曜休み ●Maria Grammatico(マンマ・グランマティコ) Via Vittorio Emanuele,14 Erice (TP) Tel0923-869390 無休 ●Antica Dolceria Bonajuto(アンティカ・ドルチェリア・ボナユート) Corso Umberto I,159 Modica (RG) Tel0932-941225 info@bonajuto.it ●Caffe’Sicilia(カフェ・シチリア) Corso Vittorio Emanuele,125 Noto (SR) Tel0931-835013 caffesicilia@tin.it ●I dolci di Nonna Vincenza(イ・ドルチ・ディ・ノンナ・ヴィンチェンツァ) Piazza San Placido,7 Catania Tel095-7151844 www.dolcinonnavincenza.it info@dolcinonnavincenza.it 火曜午前休み ●Corsino(コルシーノ) Via Nazionale,2 Palazzolo Acreide (SR) Tel0931-875035 www.corsino.it corsino@cosrino.itSAPORITAをもっと見る
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