ほんもの (?)の中国料理、フィレンツェ上陸!
ここ2、3日、やや暑さもおさまって過ごしやすい。 でもこれで安心していると、してやられるんだな、 本物のイタリアの夏に。 この時期、私たちニッポン人が食べたくなるのは 冷たいツルツルものとか、冷や奴とかで、 間違ってもミートソース系のパスタ・アル・スーゴとか、 ビステッカ・アラ・フィオレンティーナではない。 食べるとそれなりにいけちゃうけれど、 食べたいという気持ちにはなりにくい。 これはDNAの問題ですね。イタリア人たちは今日も元気に パスタと肉、ついでにドルチェもいってますから。 料理雑誌に紹介するため、常日頃からフィレンツェの ニューオープンの店を探している。 新聞、雑誌を隅から隅まで眺め、料理ジャーナリストや スローフード協会のメルマガをチェックする。もちろん 自分の足で歩いて探しもする。 ミラノやローマに比べて街は小さいし、変化もほとんどない フィレンツェで、毎月新しい店を探し出すのは本当に苦労。 この苦労から逃れたい一心で「ミラノに引っ越そうかな」 という気の迷いも時々起こる。 そんなフィレンツェだが、ここしばらくニューオープン情報が 比較的頻繁なのは何かの僥倖としかいいようがない。 しかも、不思議なことにイタリア料理以外の店ばかり。 ちょっと前までは魚介料理の店のオープンラッシュだった。 肉中心の食文化を頑に守ってきたフィレンツェの魚介ブームは 遅れてやってきた健康志向の現れであった。マグロのカルパッチョ なんて、今やごく普通。スシブームに乗っかって、不思議な 寿司もどきがパーティのフィンガーフードとして受ける。 我々がフィレンツェに越してきた98年当時は 生のマグロを食べるなんてありえなかったのに。 魚介ブームのあとはエスニックブームらしい。 まずはケバブ屋。一昨年あたりから雨後のタケノコのように ほいほいと出来た。ファストフードだから開店も簡単、 経営も難しそうではない。それにもともと北アフリカ系の 移民が多い国柄、ケバブはなじみのあるエスニックだ。 そして、今年に入って目立つのがロシア料理屋。 イクラ、キャビア、ブリニ、ボルシチ、ウォッカ。 イタリアの総菜屋の定番であるインサラータ・ルッサ(ロシア風サラダ) ももちろんある。マヨネーズたっぷりであえたミックスベジタブル。 すごくジャンキーな感じがするけど、なぜかロシア伝来らしい。 余談だが、ロシア料理屋にロシア人がくると、 料理をいっぺんに持ってこさせるそうな。居酒屋状態で テーブルに料理を並べ、みんなでつついて食べる。 一皿ずつ食べるコース料理という方式をフランスに伝えたのは ロシアだと聞いていたけど、それも完全に過去の話なのか、 はたまた私がだまされたのか。 話戻って、今、最新の注目エスニックといえば、中国料理。 中華の店は昔からフィレンツェにあるし、イタリアのどんな 田舎へ行っても必ず1軒は中国料理屋があるくらい、 密かにしっかりと浸透しているはずの中国料理。しかし、 折からの中国急成長に伴い、イタリアはにわかに中国への興味を 募らせて、企業誘致だの、イタリアンモードを売りつける ビッグマーケットだのと盛り上がって、その余波ともいうべき 中国料理ブームが起こりかけている。 この月末、フィレンツェの3大高級ホテルのひとつ、 グランドホテルで、北京のSt.Regisホテルのシェフを迎えて 高級中国料理フェアが開かれるに至っているくらいだから。 今まで中国料理といえば、安かろう、油っこかろうというのが 一般的なイメージだったし、巷の中華屋は本当にその通りだ。 日本の中華屋で食べるほうが全然美味しい。 でも、この新中国料理ブームで、状況は少なからず変わるだろう。 というか、変わってほしい。新鮮な野菜と油を使うだけでも ものすごく美味しくなるはずだから。 で、できればお値段はあまり変わることがないといいんだけれど。 お金使わずして、ちょっと違うものを食べたいというときに 中華屋は便利だったからなぁ。 和食並みの高さになったら、もう我々に逃げ道はない。mnm

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