Del Cambio@Torino
カリニャーノ宮殿前にある名門中の名門にして老舗中の超老舗。創業1757年、かつ てはミシュラン2つ星。しかし正統という言葉がこれほど似合う店はイタリアといえど もそう多くはない。トレンドだとかクチーナ・リヴィジタータだとかクレアティーヴァだとかいう言葉を日々使うのが馬鹿らしくなるほど正統にしてオーソドックス。ゴージャスにしてトラディショナル。なにせ店内に飾られた19世紀のメニューは今日とほ ぼ変わらないのだから。完成された郷土料理というものがどれだけポテンシャルが高 く、100年の時を経ても人々に愛されるのかがあらためて理解できる。 地元のキノコをトマトで軽くブレゼしたアミューズとエルベ・ルーチェというアオスタに向かうイブレア渓谷のアウトクトノ、つまり地元品種のメトド・クラッシコ・ スプマンテではじめて、ヴィテッロ・トンナートには同じくエルバ・ルーチェのスティ ル。次いでカルドをパスタ生地で包んでオープン焼きしカステルマーニョのソースで 仕上げた料理にはドルチェット・ディ・アルバ。つまり一皿ごとにワインを変えてくれるわけである。 パスタは2種盛りで成牛、子牛、豚、七面鳥の4種のロースト肉を詰めたアニョロッティと希少品種のウサギのラグーのニョッキ。これにはネッビオーロ・ダルバを合わせる。セコンドは定番ブラザート・ディ・マンツォにポレンタとアチェートで煮たタ マネギの付け合わせ。これにはバルバレスコ・ソリ・パイティン1999。さらに新鮮な ピエモンテ牛のカルネ・クルーダ、マーシュの付け合わせでしめる。 前菜2品、パスタ2品、セコンド2品の計6品。考えると肉、肉、肉のコースだったが 飽きもこないし、生から煮込みまでさまざまな調理法でピエモンテ牛の美味しさを骨 の髄まで味あわせてくれる、2時間の大いなる旅だった。ドルチェは当然ボネとジャン ドゥイオッティのトルタ。合わせるのは正統ならばバローロ・キナート、あるいはブラケット・ダックイらしいがこの店ではきりりと冷やしたドライ・ベルモット!!チョコレートの美味しさはもちろんピエモンテならではだが、クリスタルのショットグラ スに注がれた辛口のベルモットを飲み干せば、気分はハードボイルド。 客層は地元の成功者ばかりで満席。観光客ゼロ。その芳名帳から顧客を一部だけ引用すれば、マストロヤンニ、ジャン・アレジ、豊田章一郎。イタリア屈指の名店であ り、一人120ユーロの勘定にとやかくいう輩も多いが、その後の長い人生に確実にひとすじの光明を与えてくれる。MASASAPORITAをもっと見る
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