Sostanza@Firenze
創業1869年、フィレンツェを代表する老舗中の老舗。その昔私がフィレンツェに移り住んだ翌日、記念すべき●才の誕生日を祝ったのはこの店だった。人に歴史あり。以来リラからユーロに変わって値段もほぼ倍、というあこぎなスタイルを守りつつも伝統の力強さは相変わらず。店員は代替わりしてもグレーの工員風制服も同じならインテリア(というか、単に内装)、厨房、メニューも変わらない。ロンバティーナ、つまり子牛のTボーン炭火焼。極限のシンプル。なにせコントルノを頼まなければイタパセ一筋ついてこない。ボッリート。サルサ・ヴェルデは別盛りで来るものの同じく装飾皆無。ミニトマトとかイタパセとか、二十日大根とかそういう本質に全く関係ないあしらいをする店が滑稽に思えてくるほどシンプルのシンプル。ちなみに店名は「本質」という意味である。 その極限にまで装飾を削り落としたミニマリズマなクチーナ・フィオレンティーナは豪華一品主義。一皿にひとつの食材のみ、量が質に転換する、こうしたキーワードに心ひかれれば「本質」も見えてくるはず。まさにイタリアの本質である。城山三郎の作品に「粗にして野だが卑ではない」という伝記があるが、そのタイトルを地でいく。大体店名に「本質」という言葉を選ぶ気概のある店主はもはや文学者であり哲学者である。ニーチェがレストランを開いていたらこう名付けていたかもしれない。Se avesse…という仮定の話。継続は力なり。MASA

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