Cantinetta Antinori@Firenze

数日前からどういうわけかものすごくこの店のアーティチョークとエビのサラダが食べたくて仕方なかった。最後に行ったのは3年前? つまりそれだけ「なくてもよかった」味なのに、ある日突然「どうしても食べたい」味になる。不思議。
アンティノーリ公爵の館の1階、二重のガラス扉を開けると、深いマホガニー色のテーブルと正面に同色のカウンター、壁にそってぐるりとベンチシート、その上にちょっとくたびれたクッションが並ぶ。メゾネット形式の二階席もあるが、そちらは今日は満席のよう。
テーブルの上はクロスではなく、ちょっと小さめの白いリネンのランチョンマット。こういうテーブルセットをする店はあまり見ない。使い込まれたテーブルの綺麗な表面を隠さず、しかも濃い色目と真っ白なリネンのコントラストを強調していて、美しい。予め置かれた塩・胡椒・オイルのセットも、ごく薄いガラス製のオリエーラが目を引く。隣のテーブルのおじさまが、どこのものか?とカメリエーラに尋ねると、「フィレンツェの工房にオリジナルで作らせている」とのこと。希望すれば注文しておいてくれるという。ちょっと心惹かれる。
メニュは定番とメニュ・デル・ジョルノ、そしておすすめグラスワインとそれに合わせる単品という構成。この中からブラッチェスカのロッソ・ディ・モンテプルチャーノとキアーナ牛のタルタラの組み合わせを選択。メニュ・デル・ジョルノからはカーボロ・ネーロのフェットゥンタ(すごく大きい。これはもうフェットゥントーナ)、定番から白いんげんとサルシッチャの煮込み、そして念願のアーティチョークとガンベローニの温サラダを選んだ。
前菜のタルタラはケイパーやピクルスがやや効きすぎて、せっかくのお肉の味が隠されていたのが残念。サルシッチャは煮すぎて出がらしになっていたのが残念。そして、ガンベローニは火の通り具合がちょっと行き過ぎていて、私が記憶していたほとんど生!な感じがなくて、残念。でも、カメリエーラのお姉さんの惜しげもない華やかな笑顔が素敵だったので救われた気持ち。最後のお勘定でちょっと落ち込んだのは、まぁ予想していたことだったけれど。グラスワイン2杯、水1本、カフェ2つで、しめて86ユーロちょっと。地元ランチで散財する贅沢。
ところで、食卓に供されるパン。ごく普通のトスカーナパンだと、よほどお腹がすいているか、料理がしょっぱい時以外には手を出さない。だからといってなくてもいいというわけではなく、ちょっと美味しいパンはあってほしい。そういう意味では、ここのパンはそこそこ美味しくて、しかもこれでもか、とたっぷり。全部食べないけれど量はいっぱいあるとこれまた嬉しい。それからさらにわがままを言わせていただければ、あんまり美味しすぎないほうがいい。
先日、Da Amerigoではパンの説明書きがついてきた。こうなると全部試してみなくては気がすまない。そして、全部美味しい。これって胃袋許容量に限界のある人には辛すぎる。mnm
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