ガイドブックな考察0329
レストランを探す時基本的に通常私が使うのは1料理旅館→ミシュラン、2オステリア→オステリア・ディ・イタリア、3トラットリア→ガンベロ・ロッソ、4アルタ・クチーナ→ミシュランとガンベロ・ロッソの両方、である。 特に4のアルタ・クチーナの場合。2006年版のミシュランで★★★はDal Pescatore、Enoteca Pinchiorri、Al Sorriso、Le Calandre、そして新顔はドイツ人シェフ、ハインツ・ベックLa Pergolaの5件。一方ガンベロ・ロッソで★★★に相当する総合評価90点以上のスリー・フォーク「トレ・フォルケッテ」は22件。ちなみに順位はというと1位Gambero Rosso、2位Vissani、3位Don Alfonso1890といずれもミシュランでは★★。両者の評価を比べて「ではどこがおいしいのか?」という結論に導くのはあまり意味のないことなので割愛するが、編集姿勢に置いて2006年版から両者は決定的に違いを見せてきている。 ガンベロ・ロッソは2006年版から史上初のDVD付録(2枚組)を収録。その内容は22件の「トレ・フォル」リストランテのシェフ、料理、厨房が映像で収められていること。BS番組を持つガンベロ・ロッソだけに映像の力が持つ影響力の強さを誰よりも理解しており、行ったこともない街のレストランの文章を読みつつ想像を膨らませる、という古き良き旅のスタイルはもはや終わりを告げつつある。とはいえ他のガイドがガンベロ・ロッソの手法を簡単に追随できるとも思えず、ビジュアルに訴えかけるガイドとしてはもはや並ぶものはない。 こうした「アルタ・クチーナ」と並列してガンベロ・ロッソが評価し、3本海老すなわち「トレ・ガンベリ」を与えているのがトラットリア部門。伝統料理、ワインの充実、小箱度、歴史度などを総合評価しているのだが、こうした「トレ・ガンベリ」同士でさまざまなイベントを仕掛ける動きもあり、「アルタ・クチーナ」のみならず伝統料理の再活性化はさらに強まるように思える。 一方ミシュランはここ数年でガンベロ・ロッソがビジュアル化と引き換えに失ってしまった「ドライブ・ガイド性」をキープし続け道路網、ZTLなど道路情報を網羅してドライブ・ガイドの雄として未だ健在。今年でイタリア版発刊50周年ということから従来のビブ君マークに加え、新ジャンル「50年連続掲載店に与える50マーク」を創設。「老舗」という魅力的な選択肢を打ち出した功績は大きい。 もうひとつ、ミシュラン2006の重要な点はミラノとローマという2大都市のみにレストラン・カテゴリーを加えたこと。これはRegionali、Giapponese、Indianaといった地域別料理区分に加えてCreativa、Tradizionale Rivisitata、Casalaingaといった感じ。ミラノでいうと例えばCarlo Cracco、SadlerなどがCreativaで、Luogo di Aimo e NadiaなどがTradizionale Rivisitata。しかし今夜何を食べようかという時、Di MareとGiapponeseで迷うことはあっても、CreativaとRivisitataで悩むことは果たしてあるのだろうか?Cracco Peckを選ぶのはCracco Peckに行きたいからであってCreativaな店に行きたいから、ではないはず。 第一昨今Rivisitataを標榜することは少々Outになりつつあり、突然生まれて突然消えてゆく店も多い。Tradizionale側すればRivisitataは「あんなものイタリア料理じゃない」ということになり、Creativaからすれば「Creativaになりきれない半端な存在」なのであろう。結局のところ料理人にとっても消費者にとっても魅力的な選択肢というのは「伝統」と「革新」であり、その二極分化はますます広まる傾向にあるのではなかろうか。MASA 書き忘れた。もうひとつ2006年版のミシュランでは「来年の★★★」という項目が追加されている。フランス版でいうところの「エスポワール」だが、それによればすでに2007年度★★★昇格有望店が1件エスポワールされている。それはヴェローナ近郊の某クリエイティヴだが・・・。

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