宿を巡る熱き戦い、フィレンツェで展開中
フィレンツェの街中の建物の入り口に小さく、「レジデンス○○」とか「B&B○○」と書かれているところがここ数年目に見えて増えている。聞けば、去る2000年のキリスト教聖年の折り、巡礼者用に宿泊施設を大幅に増設する必要から、各州の特に観光地での宿泊施設開業のプロモーションに乗じた現象だという。 この時誕生したのは、規定が細かく莫大な資金も要るホテルではなく、小規模でホテルよりも規定の少ない宿泊施設。よく目にするのは先述のようなレジデンスやB&Bだが、これらは実際どのように分類されているのか、一般の人には今ひとつわかりにくい。 そこで、フィレンツェ県の観光局が管轄する宿泊施設に関する条例を調べてみた。まずはaffittacamera(貸部屋)。6室12ベッドを超えない施設で、飲食サービスが可能。朝食を出せばBed&Breakfastの名称もOK。街中でもっともよく目にする新興勢力だ。そして、case e apprtamenti per vacanza(バカンス用住宅とアパルタメント)は、個人ではなく会社経営の形をとるが、ホテルのような飲食その他のサービスは出来ない。一方、case per ferie(休暇用住宅)は個人宅を利用し、ホテルのようなサービスは不可。residence(レジデンス)は最低7棟を有し、それぞれにキッチンが付き、さらにホテル並みのサービスの提供も可能。といった具合に分類されるらしい。 長期滞在や旅慣れた人には、こうした非ホテル的宿泊形態のほうが、自分のペースで旅を楽しめるから便利という声も少なくない。しかし、そちらへお客さんが流れるのは困るとホテル協会は危機感を募らせ、県に圧力をかけて条例を変え、非ホテル施設の規定をどんどん厳しくしようとしているらしい。 雨後のたけのこ状態に誕生した中にはいかがなものかと思われるようなお粗末な施設もある。そういうものが改善淘汰されるのであれば喜ばしい。しかし同時に、ホテル側も、ホテルならではの良質なサービスとは何かをあらためて問われている。この熱き戦い、利用者還元の方向ならば大いに歓迎、どんどんやってほしいものである。mnm e-giornale2006年5月1日号よりSAPORITAをもっと見る
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