Davide Scabinのポスト・サイフォンと’70料理
今、イタリア料理界で最も先端を行く料理人の一人、ダヴィデ・スカビン(「Combal Zero」)がLa Repubblica delle Donne誌上で、インタビューに答えていた。タイトルは「キッチンで予見する」。 「60年代に安全を売り物とする食品会社が次々と生まれ、やがてそれはステータスを語るブランドとなり、今はCMに見られるような「理想的なフォルムの人間、家庭を具現化した」アバター的ものである」。そして、スカビン自身も「自分はアバターだ。私の店で食べるということ、すなわち、私の店で食事をするという気分を購入するのが顧客の目的であり、顧客はエモーションを食べにやってくるのだ」。 グルメ顧客を殺したのは誰か?という問いには、「料理人、みせかけの土地の産物、みせかけのクリエイティヴィティ」と答える。「各地のトラットリアでは土地の伝統料理を出す。が、その素材は巨大な物流会社から供給されたものかもしれない。特に私(39歳)の世代は、そういったトラットリアに慣れきって、伝統料理がなんであるか知っていると思い込んでいて、その実、選ぶこと、判断することを放棄してしまっている。しかし、若い世代は違う。「ポスト・サイフォン」とでもいうべき世代は、ビオのフルーツと自分で料理したものを持ち歩くような、スローフードの申し子だ」。 「イタリアの料理人は過去20年間、新しい傾向を受け入れず、これまでの経験でやりくりすることに腐心してきた。今やスペイン全盛の時代である。これはイタリアが60年代に経験したブームと似ている。近い将来、これにアメリカと北欧が続くだろう。さらに、セルビアやモンテネグロといった国々も豊かな食材の可能性を持つだけに新しい技術と好況がそこに加われば、大いに伸びてくるはずだ」。 エキセントリックな風貌と、「サイバーエッグ」に代表されるような、伝統と先鋭を融合することを得意とするスカビンは今のイタリア料理に危機感を抱きつつも、自分のやるべきことを確実に追求している。「『Combal Zero』の後は、『Doppio Zero』として、ごく私的な場所を考えている。客席は4席のみ、即興、あるいはオーダーに応じて10品ばかり用意し、顧客はその中から食べたいものを選ぶ。そこは実はホテルで、朝から晩まで、私は顧客のために尽くす。この方式であれば、場合によってはサイコテラピーや、麻薬中毒患者のケアにも応用できるだろう。そして、料理は70年代の、グルメ達からは”恥ずべき時代”とされている料理の数々を出す。アヴォカドとエビのカクテルソースとか、ペンネのウォッカ風味とか」。かなり美味しいんだよ、これが、というスカビン。いまだにメニューにのせている店は結構あるし、私も好きだけど。スカビンが出す70年代料理、ぜひ食べてみたい。mnmSAPORITAをもっと見る
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