Cenacolo del Pescatore@Firenze
明日から始まる雑誌取材のために、フィレンツェの新しくて、ちょっとこじゃれていて、しかもお値段お手頃のリストランテの開拓に勤しんでいた。なんといっても若い女性対象だから、あんまり難しい料理でも困る。というので、たとえば○ブレオは却下。メニューは口頭だし、パスタはないし、基本はパッサート(裏ごし)料理だし、しかもお値段が張るときては、食べ手にもそれなりの覚悟が必要である。 我が家の近所、オンニッサンティ教会入り口の、その隣のカラビニエリのさらにまた隣にちょっと入り口が奥まったリストランテ風情の店があったのは、3年くらい前から知っていた。が、「会員専用」と書いてあったり、その札がなくなった後もなんだか覇気の感じられない雰囲気なので見過ごしていたのだが、つい最近、どうやら本格的にオープンしたらしい、というわけで足を運んでみた。 ドアをあけると、短めのひらひらとしたランバダ・スカートの笑顔が素敵なお姉さんが出迎えてくれる。スロープ状の廊下を進む途中右手に半地下の個室ふうの部屋、そして奥に左右振り分けの客席スペースが広がる。正面には大きくガラスを仕切った厨房、中には黒ずくめユニフォームの料理人が、数えてみると4人。うち二人は同胞のかたがた。サービスは件のお姉さんと、もう一人、これまた同胞のかた。 メニューは基本的にコースで、5皿、4皿、7皿の三種。値段は順番に40、35、40ユーロと相当安い。食べきれないかもしれないけれど、「Creativo del Movimento」というタイトルの7皿をオーダーする。コース外の付き出しは一輪挿しにすとんと挿したエビの春雨揚げの一串、お醤油の香り。それから、マグロの三種(アボカドのタルタル、白いんげんとたまねぎ、トマトソース)、ホタテとフォアグラのヴィンサント・カラメルソース、トマトのミンチを真ん中に添えたモッツァレッラのスープ+揚げなすとトマトモッツァレッラソースであえたパッパルデッレ、甲殻類ラグーのマルタリアーティ・ミントとピゼッリのソース添え、アサリのグラットーニ(サルデーニャのフレーゴラのような粒状パスタ)イカスミ添え、魚三種のグリル・マリネ(ヒメジ、鯛、マグロ)野菜のピュレ添え、ドルチェはホワイトチョコのセミフレッド・洋梨とシナモンのソース&バジリコと桃のソース。 ワインリストはシンプルで種類は少ないが、迷わなくてすむという見方もある。アルザスのTOKAY(25ユーロ)は、フリウリのTocaiとは違ってフルーティで甘い、懐かしい味。仕上げにグラッパを頂戴してお勘定は115ユーロ。まずまず良心的なお値段である。 店を仕切るお姉さんRossanaさんと、厨房のDaniele Pescatoreの共同経営。DanieleはかつてDivinusという店にいたけれど、共同経営者たちが仲間割れして(ほんとうによくある話だ)閉店、当時からのスタッフを引き連れてこの店を5月から始めたという。Danieleは髪真っ黒なものすごく南イタリアな顔立ちで、聞けばナポリ出身。あぁやっぱり。それにしても、”漁師”って苗字、芸名なのかも? 因に「チェナーコロ」はギルランダイオの「最後の晩餐」があるオンニッサンティ教会の修道院の一部であったことからつけた名前。SAPORITAをもっと見る
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